流し読み…内容なんてもう頭に残らない

無理無理無理無理。

こんなん、全部読むとか無理。

ペラペラと3冊目を見る。

やっぱり、7~8歳のころの日記のようだ。

でも、もう読む気力がない。

もういいや、全部開くだけ開いてみよう。

結局、流し読みをすることにした。

☆5~6、☆2 6~7、☆3 7~8、☆4 8~9、☆5 9~10、☆6 10~11、☆7 11~12、☆8 12~13、☆9 13~14、☆10 14~15、☆11 15~16、☆12 16~17、☆13 17~18歳と思った通りの年齢配分だった。

でも、内容は全く覚えていない。


「なにしているのかしら」


背後から声がした。

俺は、振り返る。

そこには、恋焦がれた姿の『アエリア』が立っていた。


「へ、私の日記。

え、なんでこんなところになるの」


『アエリア』は、慌ててテーブルの上に置かれた日記を自身のアイテムボックスに入れてしまう。

しっかり読まなくてもいいならよかった。

全部読み込めって言うんなら地獄でしかない。


「イツキ、どういう事かしら?」


5歳の時の彼女と違って、人を見下したような下卑た表情ではない。

どうやら、メスガキ風な彼女はもういないようだ。

寧ろ、あの我儘放題だった『アエリア』は、母親に向ける愛の渇望からだったものなのだろうな。


「えっと、ガチャから出てきたものだったんです」

「そう…まあ、いいわ。他にはどんなものが出てきたのかしら」


彼女は、少し赤らんだ顔をしていたが優しく微笑んで見せた。

随分と印象が違う。


「公爵家のお邸が出てきました」

「お邸が!」

「『アエリア』様が起きてから出そうと思っていたのですが」


あ、そういえば配信…どうすればいいんだろう。

OBSもブロードキャストも使えない。

昨日は、どうやってやっていたんだろう。

そう思っていると視界の端の方で何かが点滅し始めた。

そこには、赤い文字で『LIVE -0:00:30』と表示されている。

つまり、30秒前?

よくわからないけど、配信が始まるようだ。


『待機』

『全裸待機』

『タイキック』

『タイカレー』

『タイキシャトル』


待機コメントが流れる。

あー、本当に配信が始まるらしい。

ってか、タイキックはちょっと。


「イツキ、これはなんだ?」

「えっと、みえてるんですね…妖精というか精霊と言うかが見ながらコメントをくれているんです」


外の世界と言いそうになったが、その概念があるかわからない。

それなら、妖精とか精霊とかのが分かってもらえそうだ。


「ほぅ、精霊に妖精か。

私は、ディロセイロ王国 王国騎士団所属アエリア・ディ・ブライトだ。

みな、よろしく頼む」

「じゃあ、ついでに。イツキです。

今日も配信始めていこうと思います。

一応、昨日の続きでもある『CHRONICLE』を進めていきます」


僕は、『アエリア』の後に続いて配信の挨拶をする。


『『アエリア』さまが、完全体に』

『幼女。どこどこ?』


「ふむ、幼女?完全体?」

「あー、こちら昨日も見ていた方たちです」

「む、そうか。昨日は、呪いで幼子になっていたようですまなかった。

呪いも解け、やっと元の私になれた。感謝する、イツキ。

そして、すまなかった。君には、とてもひどい言葉を浴びせてしまった」


昨日とは、打って変わってやはりしっかりしている。

流し読みして時に、気になったものがあった。

10歳の時に、高くなった鼻をへし折られたこと。

たぶん、その時から構成して今の人格が形成されたのだろう。たぶん。


「あー、いえいえ。

幼い頃の『アエリア』さまもとても可愛かったですよ」

「そうか…」

『『アエリア』さまが照れている』

『可愛い』

『推せる』

『はぁはぁはぁ』


なんか、1人やべえのが居るんだけど。

『アエリア』は、頬を赤らめながら紅茶を啜る。

でも、確かに可愛いと思った。




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