第21話「8の世界・後編」
「では、1の世界と6の世界についてだ。1の世界はここでいうところの魔界だが、ロキ達の様な下界の守護者の集まり、生命の浄化機構の為の場所ではない。死海の王を筆頭に、「大罪」を司る七大魔族、72の悪魔……、強大な魔が統べる界域だ。ここには魔族と悪魔、彼らに認められた僅かな人間、
「……悪魔。精霊もそうですが、聞いた事のない種族ですな。」
「我々の住む世界には存在しない種族だからな。他の世界に干渉する種族でもあるが、彼らは理由があって大きな干渉はあまり出来ない。その理由こそが……、」
「まだ語られていない6の世界が絡んでいると?」
先生の言葉に「その通り。」とトート神は楽しげに頷いた。
フェンリルが来る前に教えてくれたけど、基本的にあまり人が来ない場所だから、こうして話が出来るのが嬉しいみたい。
「6の世界、天界は熾天使・セラフィム、4体の大天使、七聖者、精霊、天使が住む世界だ。そして、神の力が濃い人間……、七元徳を司る
「七元徳を司る聖者……。」
サーダリア森林で出会った、純白の長刀を持った法衣の女性、セシリアさんを思い出す。
(あんな凄い人があと6人もいるんだ……。)
トート神は私を見て続ける。
「彼らは言わば、原初の神が生み出した神への抑止力、言わばカウンター勢力の様な物だ。基本的には穏やかに生きる者達だが、その実、まともにやり合えるのはハルモニアの神と魔界の上位勢くらいなものだ。」
「そんなに強いんですか!?」
私が驚くと、トート神は静かに頷く。
「君達に分かりやすいように言うならば……、熾天使や四大天使、七聖者達、魔界の大魔族は単騎でハルモニアの神と互角の存在だ。故に、この3つの勢力は協定を結んでいる。過度に他の世界に干渉をしない、と。そうでもしなければ、世界は瞬く間に滅びる羽目になるからな。全盛期の名も無き悪神が暴れた以上の厄災が世界を襲うなど、考えたくないだろう?」
「……………。」
私と先生は同時に顔を顰めた。
特に私は悪神と戦っている。あの戦いだけでも嫌気が差したのに、あれ以上なんて考えたくない。
トート神はそこで肩を竦める。
「まあ、ハルモニアの神が零落させた神を下界に追放させている件で、天界と魔界は頭を痛めているようだがな。故に、彼らは万が一のことを考え、自身が司る力の一部を下界に送り込んでいる。それが、神器と魔装具。アーティファクトと呼ばれる物だ。」
トート神は私の装着している篭手を見て、続ける。
「君の持つ正義の按手は第5の聖者、セシリア=フェムの、希望の聖銃は第2の聖者、イライジャ=トゥーの力の欠片という訳だな。」
「……………。」
(どうしよう、また気を失いたくなってきた……。)
改めて、私の持ってる物がとんでもない物でもあると認識させられる。
けど、トート神はそれを知ってか知らずか……、うん。あれは知ってるな。だって顔がにやけてるもん。そのまま続ける。
しかし、その口から出てきた情報が更にとんでもない物だと知るのは、数秒後の事だった。
「時折、善良な神も力の一部を神器として下界に送り込むが、それは稀だ。このファルゼアに存在する神由来の神器も、アルシアの持つスルトの神滅剣・レーヴァテイン、原初の神の鎖、そして……大神・クロノスが作り出したアダムの書とイヴの聖杖だけだ。」
「……………。」
「………アリス?」
「………きゅう。」
私が数分くらい気絶したのは、言うまでもない。
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