眠気ふっとぶオモシロ小話――『醒睡笑』

外清内ダク

一 ~ 十

一 星が欲しくて



 どこぞの寺に、小僧がいた。


 ある夜更けのこと。小僧は長いさおを持ち出してきて、庭のあちらこちらで夜空に向かって振り回し始めた。


 その様子を見て、お坊さんが首をかしげる。

「お前、いったい何をしとるんだ?」


 小僧が答える。

「空の星が欲しくて、はたき落とそうとしてるんですが、落ちてこないんです」


 お坊さんは大笑い。

「さてさて! 頭のにぶいやつだ。考えが足りぬわ。そんな場所から星に届くわけないだろう!

 屋根へ登りなさい」



   *



 星ひとつ見つけたる夜のうれしさは

 月にもまさる五月雨さみだれの空

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