第49話 生まれた双子
――――晩春、待ちに待ったその日が訪れる。
ピシッピシッと殻を破りながら、遂に双子が生まれてくるのである。
「よーし、がんばれよー」
リューイと共に声援を送る。
他にも侍女たちや、双子にとってはお兄ちゃんのリファ、いつの間にかスオウと結婚したと言うキャシーや、女将さんのトーリ、ユリーカや弟子たちも駆け付け、声援を送ってくれるのはありがたい。
因みに攻め男子どもは入れると際限ないので、父親のリューイ以外は外で待たせてある。
そして何かあった時に迅速に行動するためにもと、産卵経験のある侍女からの教えである。
パリッと殻を破って、まず先に頭を現したのは……金色のまるっこい短い角を生やした……女の子である。リューイゆずりの銀髪に、エメラルドグリーンの瞳と尖った耳は俺の影響か。竜の尾や翼もある。
卵の殻を破り出てきた娘を、熟練のままさん侍女たちが素早く身体を清めて産着を着せてくれる。
リファもそこに混ざり教えを受けながら、妹の誕生を喜ぶ。
そして次に遅れて頭を出したのは……小さな金色の角が埋まる黒髪、黒目の男の子だ。竜の鱗やしっぽは相変わらず金色だが……俺とリューイの東国の色をモロに受け継いでいる。
息子も同様に、ままさん侍女たちが身を清めて産着を着せてくれて、俺とリューイに順番に抱っこさせてくれる。
「わぁ……小さいなぁ……」
人間の産まれたばかりの胎児よりは、少し大きめらしいのだが、それでもこんなにも小さくて、愛おしい。
「とてもかわいいですね」
「当然だ。俺たちの子だからな」
「えぇ……!私たちの子です」
パチパチと周りから拍手が溢れる中、外で様子を窺っていたアルダやリュージュさまがそろそろ入れてくれないのかと扉を半開きにしてきたので、早速産まれた双子をお披露目してあげた。
※※※
生まれた双子は、リューイと事前に候補を出していた名前の中から、姉をロロナ、弟をセシナと名付けた。
双子は好奇心旺盛でひと懐こいが、中でもお気に入りが……。
「ちゃーいっ」
「にーちゃっ」
竜人の子……いや、竜皇の子だからか、成長の早い双子は、お兄ちゃんの幼児語も覚えたらしく、今も絶賛リファにかまってモードである。
ままさん侍女たちが乳母も兼ねてくれているが、俺とリューイも可能な限り子どもたちといるし、それからリファも弟妹を可愛がってくれており、現在はままさん侍女たちに乳母の知識だとか、子育ての知識も教わっている。こりゃぁ……孫ができるのも早いか……?
それから、女将さんも手伝いに来てくれたり、ユリーカがリュージュさまと孫たちに会いに来てくれる。
最近は幼児用のおもちゃや手作りの服なんかももらってしまった。
後は……。
「クロム、そちらは……」
「母さんと父さんからだよ。あと、私的に兄貴から」
フォレスティアからの祝いの品ももらったが、それは国として……なので、私的に兄として贈ってくれるのは、やはり兄貴である。
「父さんは母さんと一緒に、子が無事に育つようにと言う御守り」
元々は東国由来のもので、ククルにも子が生まれたら差し入れるつもりらしい。生まれるまでは別の御守りがあるから、それを渡しているようだがな。
「それからここら辺は素材だな。兄貴も一緒に詰めてくれたようだ」
ベビー用品やおもちゃを仕立てるための素材……さすがは母さん、錬金術師相手に実に的を射たものを贈ってきた。これなら、練習がてら弟子たちに素材を使って作ってもらってもいいかもなぁ。赤ちゃんたちのために何か作りたいと躍起になってたし。
「もう少し大きくなったら、お義母さまたちにも会いに行きましょうか」
「そうだなぁ。ロイドやククルたちも無事に生まれたら、会いに行くのもいいかもしれない」
「えぇ。子どもたちもきっと喜びますよ」
さまざまな思いを馳せながら、子どもたちの健やかな成長を願う。
せめてこの子たちの未来が明るいものになるよう……俺も……いや、リューイと、頑張らないとなぁ。
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