【お題で綴るラブコメ】轟木高校文芸部【お題募集中!】
天崎 剣
第1話 部長と新入部員(NG:外来語)
「はい、田畑君。今日のお題」
部室の黒板に、《外来語禁止》の文字。
田畑は恨めしそうに部長の
「禁止ったら禁止ね。田畑君は初心者だし、特に創作には興味が無いくせに文芸部に入った変わり者だから、まずは語彙力を増やす訓練からやってみましょう」
「鑪部長、言葉がストレートでキツいっす」
「はいそれ英語。言い方を変えなさい」
鑪は口を尖らせる田畑に、眉根を寄せた。
「部長は美しいのに、言葉が直線的で俺の心をグリグリ抉ってきます。だが、それがいい」
鑪は長身痩躯、長い黒髪に大きめの眼鏡が似合う美少女だった。華麗な仕草、突き放したような物言いは田畑の純真な心を鷲掴みにした。
「……田畑君が妙な性癖を持っているのはよく分かったわ。あと、そういうの全然嬉しくないから」
「そういうところがマジで好きです! 最高です、ありがとうございます!」
「聞いてる? 全然嬉しくないわよ?」
「部長のことは氷系美少女だと思ってますから大丈夫です!」
田畑なりに外来語を避けて話しているようだが、二人きりの部室でこの会話はキツい。鑪は呆れたように溜息をつき、この妙な一年生をどうすべきかしばらく思案した。
「田畑君、真面目にやらないなら、退部しても良いのよ。創作活動に全然興味ないんでしょ?」
退部、と聞いて、田畑は急にしゅんとなった。
「……嫌です。退部は勘弁してください」
「顔だけ悲しそうにするの、上手ね」
「顔だけじゃないですよ。心も悲しいって叫んでます」
「文芸部の活動が出来なくなるからじゃないでしょ?」
「部長の美しいお顔を間近でガン見出来なくなるじゃないですか。あと、せっかく部長とお近付きになれたのに、退部したら俺のことなんて直ぐに忘れちゃうでしょ……。そういうの、寂しいじゃないですか……」
田畑は適当に言った。鑪はそれを見抜いていた。
「それはどうでもいいとして。文芸部に入ったからには、ちゃんと作品作りをして欲しいし、部誌にも作品を寄せて欲しい。いいわね?」
「あったりまえじゃないですか! やりますよ、それくらい」
「小説、詩、短歌、俳句……何でもいいから秋の文化祭前までに作品を出すのよ? 部誌は近隣の高校文芸部にも送るし、文化祭でも頒布するんだから、人に読まれていいものを書くこと。分かる?」
「全然余裕ですよ。なんならもう、テーマは決まってるんで」
「……外来語」
「部長に対する溢れんばかりのこの気持ちを、作品というラブレターで表現したいと思います!!」
「……外来語禁止よ、田畑君」
「あ」
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