「オフィスの妖精」★★★★★★★★★★

〇収録「未来いそっぷ」


〇評価(10点満点)

 アイデア:5(5点満点)

 文章  :5(5点満点)

 合計  :10


〇あらすじ

 新しく導入された万能事務装置は、「オフィスの妖精」とでも呼ぶべき代物で。


〇寸評

 AI社会の到来を予想したかのような作品。

 50年以上前に、よくこれほど具体的なアイデアの形に落とし込んだものである。感服。

 先見性や未来予測は評価に入れないのを基本にしているが、これは別かな。ただ、未来を予測しているだけでなく、その先、AIと人間の関係に対する危機感が提示されている。拒絶ではなく融合、言い換えればAIの、我々の心への侵入をどこまで許すのかという、問題提起。

 文章もすばらしい。「オフィスの妖精」に若干の反感を抱いていた主人公が、徐々にそれを失って行く筆致が見事。

 ちなみに、この作品を私がオマージュしたのが、以下の作品。


「手のひらの妖精」

https://kakuyomu.jp/works/16818093081166915442/episodes/16818093083992941692


 さらに余談だが、村上春樹さんが「職業としての小説家」(新潮文庫)で、アゴタ・クリストフという作家について、『思い入れのない的確な描写』(37ページ)と評しているが、これは星新一の文章にも当てはまる言葉ではないだろうか。作者の思い入れを徹底的に排除すると、星新一の文体になる。

 言い換えると、別の言語で書かれた小説が、日本語に訳されたような感覚を星の文章からはおぼえる。手短に本筋を伝えるために、不要な枝葉が刈られた文体。

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