「生活維持省」★★★★★★★★★★

〇収録「ボッコちゃん」


〇評価(10点満点)

 アイデア:5(5点満点)

 文章  :5(5点満点)

 合計  :10


〇あらすじ

 ある一点をのぞいて、理想的な社会に暮らす人々……


〇寸評

 星新一の代表作であるとともに、おそらくこれからも長い間読まれるであろう、永続性をもったディストピア小説の傑作。

 冒頭の平和な社会の描写を読んでいても、読む手が止まらないのは、「生活維持省」という不穏なタイトルのおかげであろう。一見、のどかに見える描写の裏に何か隠されているのだろうかと、行間で読者を不安にさせる。最初の上司とのやりとりもよい導入になっている。

 人間社会に対する、星の深い諦念といったものを感じさせる、美しくも残酷な物語であり、読む者に「きみならば、この社会を受け入れられるか」と突きつける快作である。

 現代社会に対する鋭い批評性や予見性にも注目である。

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