ボッコちゃん
「悪魔」★★★★★★★☆☆☆
〇収録「ボッコちゃん」
〇評価(10点満点)
アイデア:4(5点満点)
文章 :3(5点満点)
合計 :7
〇あらすじ
古いツボを釣り上げたエヌ氏が、なにげなくフタをあけてみると……。
〇寸評
名著「ボッコちゃん」および「星新一ショートショート1001」の冒頭を飾るにふさわしい一作。実に星らしい物語であり、名刺代わりの作品と言える。
アイデア、文章ともに、これから評価していく上での基準としてちょうどいい。
まずは、この作品より上のものを残していけば、私の選集の完成に近づくであろう。
一作目からエヌ氏が登場するのも門出の作品としてうれしいかぎりだ。星がエヌ氏という表現を用いた理由はいろいろとあるだろうが、第一に言えることは、物語は固有名詞から腐るということだ。それを避けるために、一定の成果を出していると言えるだろう。
作品のアイデアは星らしい皮肉が効いていてよい。同時に、寓話的かつ民話的で、晩年に彼が辿り着いた作風の萌芽を感じる。個人的には、トルストイの民話、とくに「人にはどれほどの土地がいるか」を連想した。
文章については、「た」の多用で民話、寓話感が出ていると評価する者もいれば、単調と片付ける者もいるだろう。私は前者の立場をとりつつも、冒頭はもう一工夫あってもよかったのではないかと思う。
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