第11話 金貨と宿屋ジャッジ

 プレセペの街には、宿屋がいくつもあった。……すげぇ、こんなにあるものなのか。田舎者の俺にとっては衝撃的だった。

 都会ってスゲェ……!


 少し歩き『ジャッジ』という宿屋に到着。

 この辺りではそこそこ良い宿らしい。


「デカ! 三階建てなのか」

「アウレアさん、こういう建物は初めてですか?」

「ああ、リディア。俺はプレセペの街自体に圧倒されている。てか、世間にはこんな大きな家がいっぱいあるものなのか?」


「そうですよ」


「……マジか」


 外の世界って凄いんだな。

 長年村暮らしだったから、本当に驚いている。


 ジャッジマンに入って受付へ。


 受付には小さな女の子がいた。……子供?

 可愛い子だなぁ。



「いらっしゃいませー。お二人と猫ちゃんですね!」

「一泊したい。これで足りるか?」


「はいー…、って、これテスラ金貨じゃないですか! 何週間泊まる気ですか!?」


「え……」



 俺、宿屋の利用は初めてだから相場が分からないんだよなぁ。今まで泊めてもらってばかりだったし。



「アウレアさん、一泊なら3000セルで十分です」

「え、そんなものなの!?」

「そんなものです」


 けど、細かいの持っていないんだよなー。


「俺、金貨と銀貨しか持ってないよ。あとアイテム」

「大丈夫ですよ。ちゃんと払えます。受付さんがびっくりしただけですから」

「なるほど……」


 どうやら俺がいきなり金貨を出したものだから、女の子が動揺しちゃったようだ。申し訳ないことをした。


「で、ではテスラ金貨ですね」

「ああ。俺と連れ、猫一匹」

「ご利用ありがとうございます。では、おつりと部屋のカギです」


 おつりを受け取り、部屋のカギも入手。

 廊下を進み、奥の部屋へ。

 ここらしい。カギを回し、扉を開けた。

 中はとても綺麗でホコリひとつない清潔感のある部屋だった。……おぉ、ピカピカだ。


「わぁ~可愛い部屋ですね!」

「って、一緒の部屋にしちゃった……。リディア、もう一部屋借りようか?」

「大丈夫です! 私、アウレアさんのこと信じてますし」

「そ、そか。そう言ってくれると嬉しいよ」


 マジで嬉しかった。

 なんだか気分も上がってきて、楽しくなってきた。

 舞い上がっているとニキシーが肉球で俺の頬を突く。


「鼻の下伸びてますよ」

「なんだ、ニキシー。嫉妬か?」

「違いますよ! ボク、猫ですし!」


 なぜかプンプンと怒るニキシー。なんだ、やっぱり妬いているのか?


 それから、俺はふかふかのベッドで小休止。

 リディアも荷物を整理したり、剣の手入れをしていた。



 時間は経ち――夜。



「お腹、空きましたね」


 リディアの一言で俺も空腹だと気づいた。楽しすぎてメシを忘れてた!


「どこかへ食べに行くか。……と、言っても飲食店とか詳しくないんだが」

「大丈夫です。マリンさんに聞きましたから」

「マリンさん?」

「受付の女の子の名前です」


 そんな可愛らしい名前だったのか、あの子!

 腰まで伸びる青い髪が綺麗だったなぁ。


「よし、行こう」

「はいっ」


 夜の街はこれまた違った風景があった。村のように真っ暗ではなく、街灯があって明るかった。……夜でこんなに明るいって! 奇跡かな!


 夜道を歩き、そのお店へ向かった。


 少し歩くと目的地に到着した――瞬間。



『ドゴオオオオオオオ、バリイイイイイイイイン!!』



 店の窓が破壊され、中から人が飛び出てきた。



「な、なにごと!?」

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