第4話 自分の顔

オーウェンが戻るのを待つ間、記憶を辿ってみるが、名前と性別、大学生であった事等が朧気おぼろげによみがえるだけだ。


親の顔も忘れてるし

顔か……俺はどんな顔だ?


気になるといてもたってもいられない所だが、まずはオーウェンを待たねばならない。


「特別に町へ入る許可をもらったから、入れるぞ」


「良かった~」


町の木作りの門を抜け、通りを彼の後に従って歩く。素朴な雰囲気の木製の家や店が立ち並び、時折石造りの金額がかかりそうな家もあった。



「お疲れ様です」


「ご苦労」


オーウェンに挨拶する青年が通りすぎる。


「これから昼か」


「まぁ、そうだな」


オーウェンと同僚?が挨拶を交わした。


中間管理職?みたいな感じか


束ねた銀髪をなびかせる背後を影のごとく歩いているだけなのに、腹が減ってきた。


昼位の時間なのか

何食べるんだろう


わくわくしていると、彼の足が停止した。


ま、まさか


お世辞にも綺麗なお店とは言えない寂れた店だ。表通りからそれた通りにある古びた看板の店に入る。店内は外観とは裏腹に賑わっており、人間の他にちらほら他の種族もいる。


ファンタジー世界だもんな


「いらっしゃいませ」


感心していると、小柄なおばあさんがちょこまかと歩いてきた。


「これを二つ」


「はいはい」


メニュー見たかったのに


「メニュー見ないの?」


「あいにくと持ち合わせがあまり無い」


「あぁ…そうなんですね」


むすりと呟くので、曖昧にうなずいておく。運ばれてきたウインナーパン的な代物しろものは、可もなく不可もない味だったが、不味くは無いので、むしろ美味しいと思えた。


「美味しい」


「そうだろうそうだろう」


機嫌良さそうに微笑むと、妙に王子様オーラが漂う。


イケメンって得だ

そうだった 

自分の顔が見たい


「鏡あります?」


「鏡?手鏡ならあるが」


「ちょっと借ります。ふーん・・・こんなか」


前とあんまり変わらない容姿と思うが、黒髪でありながら、目が赤紫色だ。猫に似た目尻の上がった目に、小さめの矢印鼻。そばかすのある顔立ちでイケメンオーウェンよりは普通かもしれない。


「何だ。お前、顔も忘れたのか」


「はい。まぁ、一応記憶無いんで」


「一応だと?」


「いえ、、えっと、、お、美味しいなぁ」


いぶかしむオーウェンから目をそらす。

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