第2話 オランビス島へ①

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ついに当日。


人生初めての海外視察がはじまった。


搭乗まで少し時間があり、私、みふるちゃん、押領司さんは空港のフロアで待機中。



「…………」



その間に私はオランビス島までの移動手段をiPadで確認する事にした。


たしか…目的の【オランビス島】までは、まず日本からハワイまで飛行機で乗り継ぎ、次にハワイ空港から海辺までタクシーで移動。


海辺に着いたら現地の方と合流して、大型船で島まで行く手段だったはず。



「…………」


飛行機に乗ったら…もう海外なんだよね。日本とは違う文化や生活にふれるのは楽しみだな。これからの体験にドキドキと胸が高鳴る。


みふる「始まったぁ…海外でお仕事できるなんて…滅多にないから…いるか先輩!私、頑張ります!」


みふるちゃんは片手に英会話本を持ち、意気込んでいた。彼女の瞳は希望と喜びに満ち溢れていて、なんだか眩しすぎる。



ひょっい。(英会話本を取り上げる音)


ひすい「こらっみふる。頑張るのは良いけど勉強しすぎよ。せっかくの海外なんだから楽しまないと…」


みふる「あっ…はいっ押領司さん!休憩も大事ですよね!休みます。」ガタガタ


押領司さんの誤解が解けたとは言え、みふるちゃんは少し怯えている。仲良くなるまで少し時間がかかるかな…うーん…ここは私が話題をだして2人の仲を…


そう思い、話をしようと口を開いた途端。



ひすい「………みふる」


みふる「なっ何でしょう!おうりょっ…!?」


押領司さんの方が一足早かった。

彼女はみふるちゃんの頬を優しく両手で包み込んだ。


「………ほわわ…」

…なんだか…触れ方が色めいているような…私が見て大丈夫かしら…。


みふる「えっ…あの…押領司さん?」


ひすい「…みふるに怯えられるのは私悲しいな。くすん…くすん。」←嘘泣き


みふる「!!…おっ押領司さん!ごめんなさいっ…ぜひ仲良くなりましょう!涙ふきますね!!」


美しく涙をこぼす押領司さんに、みふるちゃんは慌ててハンカチを取り出し、目元を拭き始めた。


……私の介入がなくても大丈夫そう。実際2人ともお互いに「仲良くなりたい」って言っていたし…そっと見守った方が良いよね。


2人のやり取りを見て、ほっと息を撫でおろした。



ポーン(アナウンスの音)


受付「お待たせいたしました。--10:00発ハワイ行き、搭乗の準備が整いました。チケットをお持ちの方は8番フロアまでお越しください。」


ちょうど良いタイミングで搭乗案内のアナウンスが流れた。


ひすい「さっ!みふる。海原さん。8番フロアに行きましょうか!」


先程までシクシク泣いてた押領司さんは、笑顔に切り替わり、みふるちゃんの手を引き歩き始めた。


みふる「へっ…あっ…あの!いるか先輩も」


手を繋がれて戸惑ったみふるちゃんは、繋がれていない手を私の前に出した。


これは…手を繋いだ方が正解かな。


そっと手を繋ぐと、みふるちゃんは安心した表情に変わる。手を繋いで正解だったみたい。



みふる「なんだか…誰かと手を繋ぐなんて小学生以来ですね(照)」


「本当だね みふるちゃん。実は私もなんだ。子供の頃に戻ったみたい。」


ひすい「………ふふっ…2人共たらっ」

(まんまと騙されちゃって…みふるは可愛いな…海原さんも純粋な性格でよかった…)


その後、受付を済ました私たちは飛行機に乗り込んだ。



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--ポーン--


【搭機はまもなく離陸します。お荷物は目上のロッカーへ収納し、シートベルトをお締めください。】



ガヤ ガヤ ガヤ


ガヤ ガヤ ガヤ



アナウスと共に荷物をロッカーにしまい、シートベルトを締めたり、それぞれ離陸の準備を始める。


刻々と海外視察が近づいてく度、現地の方の交流、段取りなと、仕事のプレッシャーが重くのし掛かる。


うっ…少し胃がキリキリしてきた…



みふる「滞在場所のオラビス島…南の孤島で1週間…いるか先輩、押領司さん、よろしくお願いします。」


「よろしくお願いします。3人で良い旅行プランを作りましょう!」


ひすい「ええ…私も出世にかかってるから、今回は頑張らないとね。」




でも…離陸前お互いに「1週間よろしくね」だの、「がんばろうね」って軽く話したお陰で不安が和らげた。




だけど、この時の私たちは知らなかった。



日本に帰ってこれるのは1年後だなんて…


オランビス島で【あの事件】が起きて、世界を巡る冒険が始まるなんて…




私も…

みふるちゃんも…

押領司さんも…



誰1人知らなかったの。


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