ダチュラの口付け 第11話

「……」

「……以上が、この度の報告になります」


 目元を真っ赤に腫らせたローリエから、事の顛末を聞いた絶望した。

 レンジアが怪しいというのは、ローリエから聞いていた。


 しかし、タンジの気持ちなど、知らなかった。

 いや、知ろうともしなかった。


 タンジの幸せを勝手に決めつけて、強引に進めた結果がこれだ。この国は、王弟と魔女の両方を失った。


「……遺体は」

「綺麗に、してあります。いつでも、埋葬できます」

「会わせてくれ、二人に」

「ですが……」

「しきたりなどどうでもいい。……全て俺のせいだ。謝らせてくれ、もう遅いとしても」


 ローリエは、小さく頷いた。

 二人は伴って、地下の霊安室へと向かう。

 重い扉の先には、二つのベッド。顔に布をかけられた二人が、静かに眠っていた。


「……タンジ、レンジア」


 リンドの声に応えはない。


「……俺のせいだ、全て。呪ってくれ、俺に罰をくれ。幸せになって欲しかっただけなんだ……っ、すまない……本当に、すまなかった……」


 涙ながらに崩れ落ちるリンド。


「……二人を、同じ墓に入れてやろう」

「……申し訳ありません、王よ。それはできないのです」

「……ああ、わかっている。でも、これじゃあ二人は、幸せになれない。二人で一緒に居させてやりたいんだ」

「……」


 二人は静かに眠っている。もう二度と、目覚める事はない。

 

 












 この国には、綺麗な墓が二つ隣り合っている。それぞれ、墓石に寄り添うように花が咲いている。

 一つは薄紫の小さな花。一つは黄色の丸い花。

 墓の間には、透明なケースが埋められている。その中には、黄色のブローチと、薄紫の飾りがついたネックレス。


 これは、幸せを求めた、魔女と王弟のお話。

 

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新・折上短編集 折上莢 @o_ri_ga_mi_

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