第二章 エルフの国
趣味
僕が眠っている間に、話はずいぶんと一気に進んでいたらしい。
ぐっすりと眠って朝。
「……なんでそうなったの?」
快眠で起き上がっていた僕は自分に現状でわかっている範囲内の事の顛末を教えてくれた生徒会長の前で、疑問の声を上げる。
まず、僕と生徒会長は自由の身となった……ばかりか、事態の収拾に尽力したということを評価して表彰までしてくれるらしい。
だが、その次にもめていたのは誰が僕と生徒会長を表彰するかという話である。
何故か。
その理由は簡単で、今回の事件が次期国王は誰かという政治的闘争に結び付いたからだ。
何でも、今回の事件を引き起こした犯人はお前だっ!と、王位継承権を持ち、なおかつ王位に近いものたち全員が互いに言い合っているような状況らしい。
「……結局、犯人は誰なんだし」
そんな状況で果たして、真犯人はしっかりと見つけられるのだろうか。
「さぁ?わからないな」
僕のため息交じりの言葉に対して、生徒会長は肩をすくめながら答える。
「まっ、どうでもいいや」
とはいえ、別に僕にとって、今回の事件の首謀者が誰とかはさほど興味ない。
心躍るような面倒事でもなさそうだしな。
「それじゃあ、僕はもうこの場を離れていい、ってことだろう?」
「あぁ!まぁ、そういうことになるだろうな……だが、今日も学校だぞ?」
「ん?別にー、今日はサボるわ」
「そんなこと、生徒会長である私が許すと思っているのか?」
「おっ?なんだァ?ここでちょっくら、もう一度暴れるか?ちなみに僕は快調だが……今の君はどうだい?」
「……」
僕の言葉に生徒会長は口を閉ざす。
戦闘の後も、もろもろの人とのやり取りで疲弊しているように見える。
今の生徒会長……エルピスでは、どうやっても僕に勝てない。元から勝てないけど。
「エルピスがその服を脱いで僕を止める……つうなら、話は別だけどなぁ?」
「んなっ!?」
僕のセクハラ発言を聞いた生徒会長が頬を真っ赤に染めて驚愕の言葉を上げる。
「はっはっは!というわけで失礼するよ」
生徒会長を美味しく頂くのは別に今じゃないかな。
僕には、彼女を頂きたいタイミングがあるのだ。
それに、うちの父親もそろそろ動くだろうし、ね。
「そんじゃあねぇー」
僕は固まっている生徒会長の元から離れ、そのまま高級街の方を出ていく。
「やっぱ、誰かの下でいるのは趣味じゃねぇんだよなぁ」
魔法でもって自分の姿形を変えた僕はそのままぼんやりと自分の趣味について語りながら、娼館の集まる色町へと向かっていくのだった。
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