棒読み無表情で「好き」ってクラスメイトが嘘告白して来たので全力で言い返したんだけど,何か次の日からグイグイくる
岡 あこ
秋道さんは立ち上がる
始まり
第1話 プロローグ
人間関係は面倒だ.面倒な事になったから高校では,避けて来た.恋愛も友情も面倒だ.……コミュ症って訳ではない,多分,きっとそう信じてる.
まあでも避けれない事故もある.
「好き」
放課後,それなりに人がいる教室でいきなりクラスメイトの秋道 楓は無表情でそう言って来た.
彼女はクラスの所謂自称一軍の自称陽キャだ.真の陽キャは,誰にでも分け隔てなく放つ委員長やテニス部のやつとかだろう.今は陰キャのやっかみはどうでも良いか.
とりあえず,秋道さんは,グループ内では何故か立場が弱いから,こんな事をしているのだろう.どうやら顔だけで力関係が決まる訳ではないらしい.
だから,まあ嘘告白,罰ゲームの類だろう.カメラ回してるし.クスクス笑ってるし.
普通にモラルを疑う.
それにしてもどうして僕だ?僕は普通過ぎる.いや普通だからか?
さてと,どうした物だろうか?
いやまあ,うん違うのだ,分かっている.この場合は僕はどうやっても終わる.
肯定も否定も死だ.
ああそれならもういっその事なるべく被害を与えて終わろう.なるべく酷く断ろう.
まあ嘘告白とかして来たんだから,これぐらいされても問題ないだろう.
「流石にバレますよ.馬鹿にしすぎでは?それともそんな事も考えられないんですか?」
教室が固まった.僕の言葉が想定外だったのだろう.まあ,反論は想定しないよね.窮鼠猫を嚙む的な展開かな?
「えっ」
秋道さんは,固まっていた.
「まずこんなくだらない事するなって話ですよね.何が面白いんですか?」
「えっ」
「ああ,いや,すいません,面白いですよね.貴方方の高等なセンスが僕のような陰キャには理解出来ませんでした.いやー,流石です.お・も・し・ろ.凄いですね.こんなことでも,面白いと感じられる豊かな感性尊敬します.」
……凄いな,自分でも驚くぐらいスラスラと言葉が出てくる.ああ,うん,僕に友達いないのは,自業自得だな.性格が終わってる.
空気が冷え切った所で一人が口を開いた.秋道さんのグループリーダー格の夏野さんだ.
「はぁ,うちらの事をバカにしてるの?」
怖っ,ギャル怖い.多分,一番ノリノリで罰ゲーム決めたんだろうな.まあ,失うものがない人間を舐めるなよ.マイナス2が,マイナス50になっても対してもう問題ない.まあ,バカにはしてるけど,それはお互い様だろ.
「誰も,一言も,貴方たちの事って言ってませんよ.自首お疲れ様で~す.」
もう,なんかうん,ここまで来れば無敵だった.
「はぁ,何なのマジ,ああつまんな.マジで.ウザい.」
「いや,それこっちのセリフですけど.自分達からぶつかってきて,何を言ってるんですか?頭悪いんですか~?てか,秋道さんは何か言いなよ.」
まあ,僕がウザいのはその通りだと思うが,そっちが先に仕掛けてきたのだ.
「……」
秋道さんは,無表情で下を向いていた.
「てかバレバレなのもどうかと思いますよ.流石に棒読みすぎません?するなら,ちゃんとしましょ.ただでさえ,くだらないのに,演技が下手だと更に面白くないですからね.」
「えっ」
「無表情で,無感情でも,その見た目だったら,上手く行くと思いましたか?バカにしすぎでしょ.まずそんなバレバレの落とし穴に落ちに行きませんし.下手くそ.」
「えっ,そっちのダメ出しもするんだ.」
秋道さんは,初めて口を開いた.
「自分の意志とかないの?君は,まああったらこんな下らない罰ゲームしないか.……それに,周りもさ,隠し撮りするならもっと上手くしろよ.下手くそが.はぁ,怠いな,では,お疲れ様でした.」
帰ろ.
僕が教室の外に向かおうとしたら,青筋を浮かべてこちらを睨みつける.夏野さんがいた.金髪になんでしてるんだろ.
「……本当に,楓が,あんたの事好きだったらどうするの?」
なわけないじゃん.はぁあ
「じゃあ,僕のフルネーム分かりますか?秋道さん.」
「春樹………」
秋野さんは,言葉を詰まらせた.知ってた.クラスメイトなのだ,好きだったら名前ぐらい調べるだろ.知ってた.
「話は以上でいいかな?それに,今のこれを見て分かるでしょ.この性格の僕を好きになる人類はいない.では,さようなら.ご機嫌よ.」
そう言い残すと僕は教室は出た.僕の高校生活は終わったが,同時にまあ,クラスもまあまあな焼け野原に出来たので良いだろう.それに,これで平和になるし.
そのはずだったのだが,平和には少し遠くなるらしい.
「おはよう,春樹 優也君.名前あってるでしょ.」
次の日,完全孤立を覚悟していた僕に秋道 楓は笑顔で話しかけてきた.
美しい長く黒い髪を揺らしながら,無駄に整った顔で,無駄に美しい眼で,無駄に美しいスタイルで……何か少しムカついた.
「何が目的?詐欺?」
思わずそう返答していた.
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