ユイと星屑の消しゴム

@d_kokucho

ユイと星屑の消しゴム

ユイの筆箱には、星空のようにきらめく特別な消しゴムがありました。この消しゴムには、ユイが知らない秘密がありました。深夜、みんなが眠っている間、消しゴムさんは筆箱からこっそり抜け出して、自分の世界を探求するために冒険に出かけていたのです。


消しゴムさんは、自分自身の存在意義と、文房具としての役割を超えた何かを見つけたいという願望を持っていました。彼は、遠く離れた神秘的な場所を訪れ、自分だけの物語を集めてきました。そして、朝になると、いつも筆箱に戻って、ユイと一緒に学校へ行きました。


しかし、ある日、消しゴムさんは予期せぬトラブルに巻き込まれ、魔法の森で迷子になってしまいました。森は美しく、魔法の花や輝く川がありましたが、出口が見つかりませんでした。


朝、ユイが筆箱を開けたとき、消しゴムさんがいないことに気づきました。その日は大事なテストがありましたが、他の消しゴムではなく、お気に入りの消しゴムさんでなければと思いながらも、テストに挑みました。しかし、消しゴムさんがいないことで心が落ち着かず、いつものように集中できませんでした。


学校から帰宅したユイは、消しゴムさんがまだ戻っていないことを知り、ついにはあきらめの気持ちが芽生えました。彼女は自分の部屋に閉じこもり、元気を失ってしまいました。


その夜、心配したお母さんがユイの部屋に入ってきました。「ユイ、大丈夫?」お母さんの優しい声に、ユイは涙をこぼしました。「消しゴムさんがいなくなっちゃったの。テストもうまくいかなくて…」お母さんはユイを抱きしめ、「大切なものは必ず戻ってくるわ。ユイが信じて待っていればね」と励ましました。


翌朝、ユイが再び筆箱を開けると、消しゴムさんが戻っていました。消しゴムさんは少し汚れていましたが、その汚れは普通のものではありませんでした。ユイは、消しゴムさんの表面についた小さな葉片や、微細な土の粒子を見て、「冒険でもしてきたのかしら」と鉛筆で彼を突いて転がしました。そのとき、消しゴムから小さな声が漏れた気がしました。


ユイは消しゴムさんが帰ってきたことに安堵し、その小さな声が彼の冒険の物語を語っているのだと感じました。そして、消しゴムさんはユイにとって、ただの文房具ではなく、冒険と想像の扉を開く鍵となったのでした。

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