女神信仰
間 気楽
第0話
ここ、足高村には、女神がいる。女神は、その圧倒的な美貌と愛嬌で人々を魅了する。女神は、その美しさと可愛さだけでなく、音楽や舞を得意としていて、彼女の歌や楽器演奏、踊りに、足高村の人々は、心酔する。足高村の人々にとって、彼女の存在は憧れではない。彼女は村の人々にとって、その日その日を生きる理由であり、彼女が幸せで、健康であり続けることが、彼らの幸せである。だから、足高村の人々は、毎日働き続ける。働いて、働いて、自分が得たお金を、彼女に献上する。正確には、村の人々は、村の統治をおこなう、村議会に寄付する。女神のお世話をしているのは、村議会であり、彼らに寄付するお金は、必ず女神に使うという約束があるからである。女神は、永遠のものではない。十年たてば、村を出て、天に帰るといわれている。ただ、天に帰る代わりに、新たな女神が村にやってくるため、村の人々は悲しみながらも、新たな女神を歓迎する。女神の正体を詳しく知る者はいない。村の人々が分かっていることは、彼女が、人ではないということ。そして、彼女の故郷は天にあり、彼女には神の血が流れている、ということだけである。
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