トラウムの死

チャーハン@サッカー小説書いてる

トラウムの死

 トラオム(TRAUM)、ドイツ語で夢という意味を持つ。

 そんなことを知ったのはネット検索でトラウマをトラウムと検索した時だ。


 トラウマを検索したきっかけは、よくある恋愛関係のこじれだ。

 中々に強烈な思いをしたから、それを忘れるためにトラウマ払拭方法を調べようと思ったのである。


 トラウマとトラオム、語感が似てるよな。そんなくだらないことを思っていた時に俺はひとつのことを思いついた。これ、ホラーとして描けるのではないかと。


 そう思った俺は、トラウム・リズムという名前の作品を書いた。

 夢のリズムという何ともまぁつまらなそうな作品だ。


 そしてできたのは、三文小説の価値すらないゴミだった。

 コンセプトセンテンスもストーリーアブストラクトも存在しない、即興作品。

 当然、読めたようなものではなかった。


 ゴミが出来た。そんなことを思いながら、俺はその日のSNS投稿を止めた。

 違和感が発生したのは、次の日からだった。


 投稿した文章が、少しずつ違和感を帯びていたのだ。

 文章の末尾に.が追加されていたのである。


 昨日,文章を打ち間違えたのかもしれないと思い,俺は文章を修正した。

 それと同時に、また新作を適当に書く。


 駄文が出来たと思いながら、また眠りについた。


 そして次の日。以前書いたトラウム・リズムに変化が起きた。


 文章の締めが体言止めにすり替わっていたのだ。

 文章を変えた記憶はない。不正ログインが生じたのかと思ったが、そんな形跡も、存在していなかった。


 一体誰がと思っていると――


 ガチャンと、音が鳴る。


 ぎしぎしと迫ってくる音は、何かの足音であると理解した。

 俺がクローゼットに隠れていると、それは扉をゆっくりとあけた。


 嬉しそうに微笑んでいる元カノが、俺の部屋に入ってきたようだ。

 元カノはスマホを触りながら、俺の文章をいじっていた。

 そうして、満足した後――姿を消していった。


 玄関が二回なる音がした後――女は出て行った。


 出て行ったと思った俺は玄関を確認した後――スマホを確認した。


 以前作成した140文字のトラオム・リズムは、文章がほとんど消えていた。


 残っていたのは、たった数文字だった。


 ずっと、一緒にいるよ


 それを理解した俺は――次の日に、引っ越しを決意した。

 次の日、元カノが死体として見つかったらしい。


 死んだ日付は、司法解剖の結果から一週間も経過していたらしい。


 じゃあ、あの女は誰だったんだ。

 

 ただただ、俺は恐怖するばかりである。


 -完-

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