異世界魔王とダンジョンモール 転移逃走した先がまさかのダンジョンショッピングモールでなぜか道具屋を始めました
紫電のチュウニー
第1話 ぐわーっはっはっはっは! ……ここはどこだ?
よもやこのような過疎地域にまで勇者一行が来ようとは……。
男二人、女二人のパーティー。
まさに今、我の施設を……大事な施設を破壊しておる。
少し怖い道具を創造しただけではないか。
ええい、魔道具の恐ろしさを見せてやるわ!
「我が封じられし魔道具よ、その姿を見せよ! 魔道の首飾りよ、封じしものを吐き出せ!」
くっくっく。我の首飾りは四つの魔道具をしまっておける。
いつでも取り出すことが出来る激レア魔道具である。
この中には我の持つ強大なる能力を引き出す力が宿っておる。
この四つ……無尽蔵の魔宝玉さえあれば勇者一行など……。
「甘いわ! あなたの魔道具はこのスペルアイテムクラッシャーのミオが全て無効にするんだから!」
な、なんだと! あらゆる魔道具を制御不能にするというスペルアイテムクラッシャー!? そんな奴が実在したのか! この女、勇者よりずるい能力持ちではないか!
「災厄の魔道具を生み出す魔王、ベリドーグ! お前のせいで……お前自らが作り出したこの電撃剣、ギガインバイトで力の根源を封じてやる!」
「くっくっく。何を言っておるのだ勇者よ。我は災厄を生み出す魔道具など創造してはおらぬ。それにその剣はレプリカ……? いやまさか、本物だと? ばかな!
【ギガインバイト】
それは魔道核融合物で出来ている。
それは装備者にオールステータス500を付与する。
それは装備者に身体機能向上を得る。
それは装備者にこれを破棄出来ないを得る。
それは装備者に人を惹きつける能力を得る。
それは装備者に能力、常時帯電体質を得る。
それは装備者に固有能力、雷光加速を得る。
それは装備者に、落雷が起こると歌ってしまうを得る。
それは装備者にその他ランダム効果は対象のみが知るを得る。
……これは間違いない、我が作った半端ではない付与効果持ちの剣。
本物のギガインバイト!
「ユキト! 魔王より私が封じてる四つの道具を!」
「分かった。はぁーーーー!」
「ま、待て! ……ああ、我の最高傑作、無尽蔵の魔宝玉を破壊するなど、なんと、なんと……」
それを創造するのにどれほどの年月と激レア素材を使用したと思っておるのだ!
……それにしてもまずい。
確かにレプリカの方を隠しダンジョンの宝箱に入れたはずであったのに。
試作品である身代わりの殺人形も売り払ってしまった。
こんな誤算が……くっ、このままではまずい。
致し方ない。試作品を使うしかあるまい!
「勇者様! 援護を!」
「俺も援護するぜ! こいつを倒せばこの地方を制圧出来るはずだ!」
「さぁ、やるのよ!」
「ぐわーーーっはっはっはっは! 勇者よ。この場は一度退避させてもらおう。我が開発した試作品、一度きりしか使えぬこの、簡易転移方陣でな! ……開けゲートよ。我を導け!」
「逃がすか! 貴様のせいで俺はぁーーー! 魔王ベリドーグ!」
「さらばだ名も知らぬ勇者よ! ぐわーーっはっはっはっはっは……」
――光に包まれ転移が無事発動したぞ! 勇者の焦る顔がよく見えおるわ。
大体なぜこの我を討ち取りになど来るのだ。
あんなに強力な剣を手に出来たのも、我の魔道具生成のお陰ではないか。
我は新たな魔道具開発で忙しいのだ。
しかし、よもやあのような能力者まで連れて来るとは。
……スペルアイテムクラッシャー。実に恐ろしい存在だ。
我が安全に活動するための方法を模索せねばならぬな。
しかし、ふふふ……見えて来たぞ。このゲートを開けばそこはもう我の……「来た! お客様来た! いらっしゃいませー! 買い取り希望ですか? それともお買い上げですかぁーー!?」
「ぬ? なんだ? 貴様は誰だ。確か秘密の地下室に繋がるはずであったが……」
ここはどこなのだ? 天井が高い。どこか部屋の一室か? ふむ。道具が陳列されておるな?
薬草、上薬草に毒消し草。麻痺消し草、気付け草に食糧……これではただの道具屋ではないか。ありきたりでつまらぬ商品ばかりだ。
我の前で目を輝かせている長い黒毛の娘がおるだけで、他には誰もおらぬようだが。
「娘よ。ここはどこだ」
「今入口の扉から入って来ましたよね? 変なお客さん……ここはダンジョンショッピングモール。通称ダンジョンモールの地下一階、道具売り場でございまーす」
「なに? はっはっは。お主、
「そーなんですよ! 地下一階は道具と食糧しか買い取れませんし販売出来ませんけど。地下二階層には足装備と格闘武器、それから寝具などのお店が沢山あるんです!」
「待て待て落ち着けどういうことだ。ここ以外にも売り場があると申すのか?」
「ここ以外? お客さん。ダンジョン間違えて入ったんですか? ここはダンジョンモールですよ。ダンジョンとお買い物を同時並行して攻略するダンジョンです!」
「なんだと!? つまりここには勇者が来るような場所か! スペルアイテムクラッシャーが我の魔道具を破壊しに来るというのか!? ダンジョン最深層には真の魔王がおるというのか!?」
「お、落ち着いて下さい。ダンジョン最深層なんて誰も到達出来ていません。現在このダンジョンモールに繋がるダンジョンは、地下二階層までしか解放されておらず、それ以外は未解明なんです。一つの階層をクリアすると、大きなダンジョンモールが開拓されるらしいんです!」
いかん。我としたことが娘の話についていけぬではないか。
落ち着け。まずは確認だ。我は魔王ベリドーグ。あらゆる珍しい魔道具を創造する唯一無二の魔王なのだ!
そしてそれらの道具で勇者が我と敵対している魔王たちを倒してくれたらいいなーなんて思い、各地に我が熱心に作ったマル秘アイテムを隠してきた。
時には我より凶悪強大な魔王にも魔道具を売り込みに行ったりしていたのだ!
つまり
そうだ、まずここが我の住まう世界であるかどうかの確認だ。
「こほん。娘よ。この世界の名はずばり!」
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