コスモス•エンジン 転生物語

砂糖鹿目

プロローグ

昨今この世界に関しての起源の仮説(つまり創造論)は多岐にわたり、その数は有名な物だけでも一桁を超える。

大体はその中心に神という存在がいる。

それを否定する者はこの科学文明が栄えた現在を持ってしても多数派とはいえないだろう。

だが、私は小さい頃からその神は一体どこからきたのか?という疑問を持っていた。

最終的にその疑問は世界は傍から見れば気狂いでしかないという結論に辿り着き、それ以降日々襲ってくる矛盾と葛藤しながらもボーッと生きてきた。

高校の入学式後に教室で何気なく自己紹介を行い、教師が毎年話しているでろう定文を詠唱し終えると、教室内が新友を求める他人共によりざわめき始め、挙句の果てには俺と名前も忘れた同級生と二人きりになっていた。

俺は教師の定文詠唱の途中から実行し始めた睡眠を継続中であり、もう一人も実行時は不明だが同じ様に寝ていたのだろう。

俺が起きて睡眠中ながらも何となく察していた状況をまじまじと眺めていると、まだその人はこの状況の異物として存在していた。

つまり誰もいない机だらけの教室に彼女が忽然と降臨しているのだ。

黒色長髪のセーラー女子、机に伏せているせいで顔はわからないがほぼ確実に美人だろう。

俺は彼女をまじまじと観察していたが一向に起きる気配もないので静かに溜息を漏らした後、静かに荷物を持って立ち上がりさっさと教室を去ろうとした。


「もう、学校終わりですよ」


何故あの時こんな言葉が出たのか未だにわからないが、態々言葉として表現するならば運命だったのだろう。

彼女は私の言葉に反応して顔を持ち上げてこちらを見つめた。

やはり予想通りの美人だった。


「なんだここは?」


すると彼女は突然周りの状況を丹念に観察し始め数秒後、彼女は一つの結論に辿り着いたらしい。


「なるほど、そういうことか」


どういうことなのだろうか。


「つまりはそういうことだな」


今この状況にあるのは空っぽな教室内でさっきまで誰からも触れられてる事なく惨めにもだらしなく眠っていた俺と彼女と、空虚にも外に散っていく桜と生徒と下校時間をとっくに過ぎた時間だけだ。

この状況に於いて自分が寝ていた事に今さら気づいてわざわざそういう事だと言葉にしたというのなら、この人は相当に変人である事は間違いない。

俺は静かに教室を去ろうと実行した。


「ちょっとまて」


変人美女に妨害されてしまった。


「な、なんでしょう」


一回言葉をつっかえたからと言って、俺が決してコミュ障などと呼ばれる存在ではない事をここで主張しておこう。

明らかに状況が異常だ。


「私に眼帯と包帯をくれないか?」


鋭くもハッキリとした目に整った輪郭から真面目そうな印象を受けるその顔とは裏腹に、何か真面目ではなさそうな物を要求してきた。


「どこか痛いんですか?目が悪そうには見えませんが」


「とりあえず、ここまでいい環境なのだから建物内に治療室ぐらいあるだろう。そこに連れてってくれないか?」


「保健室のことですかね?生憎ですが私も貴方と同じく今日ここに入学したばかりの人間でして、保健室の場所をまだ知りません」


実質嘘である、俺はそんな事もあろうかと校内地図の場所を一応把握しているがそれはあくまでも自分のためだ。

早くここから去らねばと心の中で意気込んで、俺は慎重かつ的確に教室のドアへ向かった。


「なら一緒に探してくれないか?」


またもや変人美女に妨害されてしまった。


「一人でも普通に探せる物だと思うのですが」


「この世界の眼帯と包帯の素材がわからない」


逃げたいと思いながらも心のどこかでこれは逃げられないと悟り、渋々承知して教室を抜けるとすぐ横に保健室があった。

俺は自分の不注意さに嫌気が刺した。

保健室の場所が事前にわかっていたら、場所だけ伝えて眼帯包帯がわからない云々のくだりを聞かなかった事にして逃げる事もできたはずなのに。


「失礼します」


俺がそう言ってドアを開けるとそこには誰もいなかった。

その瞬間今年のおみくじが凶であった事を今更ながら思い出した。

高校でも中学と同じ様に友達は別いなくていいから、とにかく静かに過ごしたいと考えて学業御守まで買ったのに初日にして早速理想が遠のいて行くのを感じた。


「誰もいませんね、とりあえず先生呼びますか?」


俺はお守りを思いながらここから逃げ出す最後の抵抗を実行した。


「いや、欲しいのは眼帯と包帯だけだ。特段専門知識がある物でもない」


難なく妨害されてしまった。

おみくじの結果はしょうがないとして、お守りは明日にでも捨てようと心の中で強く決意した。


「じゃあ、眼帯と包帯探しますね」


探してみると彼女の存在くらい難なく見つかった。

彼女の威圧感にやられた俺はそっと彼女の隣に眼帯と包帯を置き、彼女を見ない様に棒立ちした。


「ほう、これはまた綺麗な物だ」


何かの性癖なのか?それとも保健室のプロフェッショナルなのか?それとも怪我常習犯なのか?一体何故眼帯と包帯に対して綺麗という感情が抱けるのだろうか?もしかして、彼女は眼帯と包帯対して強烈な拘りがある眼帯包帯マニアなのか?どの道まともではないだろう、これにより俺の中で彼女は変人美女から変態美女に昇格した。


「こんなものかな」


俺は遥か彼方に飛んでいた意識を現実に戻すと、右眼に眼帯をつけ左手に包帯を巻きつけいる彼女の姿がそこにはあった。


「自己紹介が遅れたな、私はフィレコ•エルモ•シルヴィーだ。まあ、この世界では斎藤茜さいとうあかねというらしいが。色々試してみたいことがある、協力して欲しい。君の名前は何というんだ?」


俺はその瞬間確定した、彼女は変人でも変態でもなかった。

いや、逆にどっでもあったからこそどっちでもなかった。

こういう存在には既に異質さを放ち、もうとっくに我々が関わる事の無いものだと決めつけていた固有名詞が存在する。

そう彼女は厨二病だ。


鈴木光すずきこうです」

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