第30話 とある歴史系YouTuberの実例を題材に①

 前回は元自衛官Aさんの動画を元に考察をしました。

 津波浸水地域の場合は、物資よりもまず避難とその方法、一週間を乗り切るための手段などで考えさせられる部分が多くありました。


 備蓄物資というのは生き残った後に必要となる物。まずは、生き残るための手段を最大限講じることが重要だということを改めて考えていただけたのではないでしょうか。



 今回は、同じくYouTuberのSさんの動画と実例を参考に考察を深めていきたいと思います。

 この方は三国志等を題材とした歴史考察動画を数多く上げており、私も日頃から非常に興味深く拝見させていただいておりました。同者による「兵站に関する一考察」シリーズはとても面白かったですので、ご興味のある方はご覧になってみてください。


 さて、このSさん──防災のために、普通の人ならあまり選択しないであろう方法を採用しておりました。そして、その着眼点も非常にユニーク且つ示唆に富んでおります。


 それは、「防災上安全な地域に」ということです。


 これはある意味、究極とも云える手段ではありますが、それが可能ならこれ以上ない手段となり得ます。Sさんは実際に、千葉から大阪へ引っ越したとおっしゃっておりました。

 

 ……ん? 大阪?

 それって南海トラフ大地震の震源域にむしろ近づいてるんじゃないですか??

 そもそも、どうせ引っ越すなら地震の無い海外の方がいいのでは?


 私を含め多くの方がその点に疑問を持つことでしょう。

 

 ……まあ海外の場合、土地勘とか言葉とか文化とか、他のことのほうが問題になりますので、あくまでも日本の中で、という制限は最初からあったのでしょう。


 Sさんによりますと、この引っ越しは南海トラフ大地震と連動しての「」を想定しての判断とおっしゃっておりました。関西は火山が少ないというのが主な理由だそうです。これより西に行くと今度は九州の火山群が迫ってきますのでね。


 当作、防災のスゝメでは主に地震と津波について述べてきましたが、Sさんは地震や津波よりも『』のほうがより深刻であると警鐘を鳴らしております。


 能登半島地震においては、津波も発生したものの震源域は内陸部に渡っており直下型と言って差し支えないものでありました。当然、地震による直接の被害も多く発生しております。

 一方の東日本大震災では、地震も広範囲にわたりましたが直接の被害の原因としては少なく、むしろ被害の大部分は津波によって引き起こされています。


 参考までに、

 東日本大震災におけるモーメント・マグニチュードの値はM9.0

 阪神・淡路大震災はM7.3

 能登半島地震M7.6

 とされています。


 想定される南海トラフ巨大地震はM9.1程度、その震源域は海底で「阪神淡路」や「能登半島」などの直下型地震とはやや異なると見られており、地震による被害と同時に津波を注意し、当然それが発生するものとして想定するべきです。もちろん、東日本大震災のときとは違い、より陸地に近い部分が震源となることが予想されますので、地震そのものの備えも必須であることは言うまでもありません。



 では何故、「富士山の噴火」なのか。

 


 この疑問に先立って──、

 まずは噴火が起こるとどのような影響が出るのかを見てみましょう。


 噴火の影響は、直接のマグマ噴出や溶岩流出、火砕流や山体崩壊等が挙げられますが、社会的に影響が大きいのはむしろ広範囲に降り注ぐ「火山灰」の方でしょう。


 火山灰は火山噴出物のうちでも2mmに満たない大きさの微小な粒子のことを指します。灰とはいいますが、実際はガラス質の砂のようなもので、水を含むと固まる性質も持っております。人間が吸入してしまうと呼吸器に影響を与え、目に入れば眼球を傷つける恐れもあります。マスクと防塵メガネは必須ですね。


 また、火山灰は水を含むと導電性を持ち電線などの送電網に重大な障害を与えます。当然ながら電車は運行不能、その他の各種インフラにも多大な影響が出ることが予想されます。これは噴火の規模に関係なく、ほんの1~2mm程度の降灰があっただけでも発生します。

 研究によると、火山灰が10cm程度積もっただけで二輪駆動車はほぼ運転が不可能になるとされており、自動車の運用は事実上できない事になります。走行ができたとしてもガラスや塗装面に傷がつくことはありますし、吸気系のフィルターが詰まることも充分想定されます。

 

 また、灰の効果量の多い地域では建物に掛かる荷重も甚大となり、建物の圧壊や倒壊なども起こります。


 そして、火山灰は雪などと違って自然に溶けることもありません。

 全ての灰は人力にて集め取り除き、廃棄しないといけないのです。

 側溝や下水溝に流れ込むと、そのまま中で詰まって重大な障害を引き起こすことがあります。これは一旦発生すると連鎖的に引き起こされ排水インフラを破壊し、最早収集のつかない状況に追い込まれます。

 くれぐれも、降灰があった際には水で流したりしてはいけません。このあたりは、火山灰と日々共に暮らしている、鹿児島などの桜島周辺の暮らし方を参考にしてみてください。

 当該地域では、「克灰袋」「集灰袋」「降灰袋」等と呼ばれる指定ごみ袋が配布されており、住民たちは自治体の指示に沿って火山灰を集めその袋に入れて指定収集場所へ出します。それら地域では「燃えるゴミの日」「燃えないゴミの日」の他に、「灰の日」というものがあるのです。

 道路インフラに関しては、始めから火山灰を想定した側溝や、除雪車ならぬ「除灰車」などが用意されています。



 次に想定される噴火規模と、

 『何故、噴火対策なのか』という疑問を具体的に紐解いていきましょう。


 ……②へつづく

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