第11話 小さき家族~どう避難する?

 私事で恐縮ですが、現在猫を一匹飼っております。


 私自身は、動物が好きなので機会があったら飼ってみたいとは思っていたのですが、母親が大の動物嫌いな性分でしたので、これまでそういった類のものには縁も理解もありませんでした。


 しかし、ひょんなことから他ならぬ母親自身が、瀕死の野良猫に食事を与えて「飼う」と言い出し、状況が一変。

 今では、家族の中でも最上位の階級にいるのがお猫様です。


 以前は、それこそ道路で猫が轢かれていても「気持ち悪い」の一言で済ませていたような母でしたが、今では車に乗っていても手を合わせて通り過ぎるほど猫信者になってしまいました。


 実際、飼ってみないとわからないことというのはあるものです。


 私自身、避難所に動物を連れてくるなんて非常識、と思っていた口でしたので大きな事は言えませんが、彼らが大切な家族であるということは現在では理解できております。そのため、避難所での困難は想像するに余りあります。

 命の軽重を語るわけにはいかないでしょうが、どうしても人間優先。その事実は愛猫家であっても致し方ない事と理解している向きも多いかと思います。


 そして猫連れの場合、どうするべきか──。


 多くの場合は、可能な限り避難所には行かない、という選択肢を採ってしまうのではないでしょうか?

 少なくとも、避難所の物資の中に動物用の食事などは含まれておりません。トイレの問題も食事も鳴き声も、避難所では敬遠される事柄です。


 愛猫家自身も、猫が原因でトラブルになることは避けたいものでしょう。そのうえでの猫の保護。


 まずは、家族と同様の備蓄物資を用意するということ。


 件のローリング備蓄に猫の食事も組み込んでおく。その他、必要となる猫砂やちゅーるなどの副食、普段使っている薬などがあったら、それらもきちんと無くなる前に補充しておきましょう。可能なら猫のためのブラシやエチケット用品なども準備しておくと良いかもしれません。ケージは必須です。


 しかし、ここまで準備しても尚、状況はあまり好転しません。


 都市部の避難所でしたら、ペット同伴も容認されているかもしれませんが、避難所によっては動物を入れることを敬遠される場合も充分に考えられます。動物嫌いの人もいますし猫アレルギーという深刻な問題も内在しています。

 苦渋の決断ですが、トラブルのもとになる前に避難所からは退出、あるいは車を使っての一時避難という形に落ち着くのかもしれません。


 現在、国では【人とペットの災害対策ガイドライン】というものを策定しております。ペットと暮らしている人は、一度目を通してみておいてください。


 まず、避難。

 そしてこれは『同行避難』が原則です。


 現状、ペットを置いて避難する勇気のある方はあまりいらっしゃらないとお思いでしょうが、東日本大震災の際には実際に外出中に地震に遭遇、ペットを避難させるために自宅に戻りそのまま津波に遭遇した例も多く聞かれております。また、阪神・淡路大震災や三宅島噴火被害の際には、放置された犬などが野生化、住民への危害の原因となる事が心配されるケースなどが報告されております。

 そのため、原則『同行避難』となっているのですが、あくまでも推奨されるということであり、実際の災害時には自治体による裁量も大きく影響します。


 人間のやることであり、これに関しては正解のない部分でもありますが、可能な限り放置することの無いよう、また自身の命を優先していただくよう願っております。


 災害時であってもペットの命も同様に保護されるべきものとして、ガイドラインには記載されておりますので、避難所に連れていくこと自体は悪しざまに非難される行為にはなりえません。しかし、避難所の事情というのはやはり千差万別で、必ずしもペットにとって有効な手立てが講じられているとは限りません。保護責任、養育責任は依然として飼い主にあるという点には留意すべきでしょう。

 所有者をはっきり明示するための、名札やマイクロチップ、鑑札などを装着しておくことも必要になります。万一、放浪動物になってしまって所有者が判明しない場合は保健所に収容されてしまうこともありえます。目で見て確認できるような備えは、必ずしておきましょう。


 避難所での具体的な対応について。


 実際には、避難所で人間と同じ生活スペースに入場できるというケースは稀で、多くの場合は屋内またはに設けられたケージや柵で囲った専用スペースを用意するといった対応をとっています。屋外に並べた専用ケージの中にペットを避難させ、そこへ飼い主が世話をしに来る形の避難所もありました(熊本地震の際に多く見られた形態でした)。場所に余裕のある避難所の場合は、一般の避難者とは別にペット連れの方専用の同伴避難部屋を設けていたケースもありましたが、大規模災害の場合には難しいでしょう。

 いずれにしても、屋根のある場所で長期間保護するわけには行かないケースが多いと思われます。冬場などは、防寒対策も必要となるでしょう。


 やはり、現状では避難場所に多くを期待するのは否定的で、ペット不可という場合も充分ありえます。

 そのため有効な手立てとしては、安全を確保したうえで自家用車の中でペットと一緒に過ごしたり、遠方の親戚や友人に預けたりせざるを得ないという状況もありえます。災害が起こってしまう前に車中避難の対策を考えたり避難用のケージを用意しておくこと、万が一の場合に預けられる先を確保しておくことも大切となります。


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