深崎 玲牙の日常「夜」

作者の独り言:いや、夜というにはまだ早いよ(午後四時ごろ)


==============


「あぁぁぁぁぁぁぁ……やっと学校が終わったぁぁぁぁ……」


しかしまだ油断できない。


学活を終わった瞬間にすぐに家に直帰できるように、そして風実さんや和井に捕まらないように、明確にこの学校の校門を出るまでのルートを考えておく。


いつもは瑠唯がそういうところを考えるのがとても得意なので任せっきりだったが、今日は初めて瑠唯が休んだ日なので自分で考えなければならない。


「それではまた明日」


担任から帰りの許可の合図の声。さっさと家に帰る。


「あ、玲牙くん!一緒に……」


風実さんが僕に声をかける前に教室を出る。そしてすぐに左に、直進、階段降りて、右に、靴箱を開けて、履き替えて、そのまま……「一般高校生が走れて注目されないくらいの速度で(陸上部並みなんて論外)校門を抜け、すぐに家の方向に向かう!さっさと!誰にも見られないまま!


「ふぅ……ここまでくればもういいだろ」


は家の近くの公園まで速攻でやってきた。ここから家まではほんの十分程度だ。


「この《かつら》もつけ続けるのキツイし、目を閉じ続けるのもそこそこにキツイんだよ」


俺は黒髪の鬘を外し、その曾祖父譲りで綺麗に纏めてあるとさっきまで糸目にするために閉じてた目を開け、先天性のも晒し、ありのままの自分に戻る。


「あぁ、中学校の頃に容姿をバカにされたのが嫌で鬘つけて糸目にしたのに、これじゃあ逆効果じゃんねぇ。しかもここで元の容姿に戻ってもイジメじみた事が増えるだけできついよなぁ」


俺は歩きながら自分の選択の間違いに独り文句を言う。言いながらも声は少しずつ弾んでいる。それは間違いなく……


「ただいまぁ、クルス」

「おかえり、玲牙」


俺の家には最高に可愛い、俺の嫁さんがいるからね!


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


深崎ふかさき 玲牙れいが。この物語の主人公である。銀髪、黒目と青目のオッドアイとかいう普通の日本人には見れない特徴。


幼少期から中学生まではこの容姿で酷いいじめを受けていた。しかし、この容姿は母親からもらった大事なものなので、同じところまで堕ちないために暴力こそ振るわなかったが静かに怒りを溜めていた。


そして中学二年生の六月、運命の出会いをする。その運命の出会いこそ、今の婚約者、というか嫁、妻である妙享司みょうりょうじ クルスとの出会いである。


幼少のころから先を読む力は優れており、小学生高学年の頃には株の仕組みを理解し、株の値動きを一か月単位で予測できた。そして実際にあっている。(それを生かして現在、小遣いになってない小遣い稼ぎをしている)


ちなみにそんな小学生のころは地域の図書館で片っ端から本を読んでは実践していた。結果、中学一年生になると廃材を組み合わせてパソコンを作ったり、突っかかってきた不良相手に護身術を披露したりと色々なところが化け物になっていた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


妙享司みょうりょうじ クルス。この物語のヒロイン。


イギリス人と日本人のハーフ。母親譲りのブロンドの髪と、アイドルや女優が尻尾を巻いて逃げ出すほどの美貌を持つ。また、父の実家が代々実業家の一族であり、資産家でも有名で、平安貴族の末裔ともいわれるほどに由緒ある家柄。


今の婚約者、というか婿、夫の深崎ふかさき 玲牙れいがとは中学二年生の梅雨ごろに会ってから紆余曲折あって結ばれた。


高校には通っていない、が、中学生三年生までに高校三年生までの内容を家庭教師と共に終わらせたため、そこらへんの難関校と呼ばれる高校の編入試験ではサクッと合格できる。


家では専業主婦(見習い)として玲牙に尽くしている。最近、自信のなかった料理にも自信を持ち始めていて毎日が楽しいと玲牙に話している。


ちなみに二つ年上の兄がいる。最近のブームはその兄に全力で惚気ること。未だに自他共に認める優良物件な癖に見合いで碌な女に会わないと愚痴っている兄にはクリティカルヒット。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ねぇ玲牙、今週末デートに行かない?」

「いいねぇ、どこにする?」

「映画を見に行きたい!最近、話題になってる恋愛映画があるの!」


鈴を転がすように笑うクルス。この笑顔を見てると、さっきの無駄な考えもすべて許せる。今日は総合して今週末のデートが決まったからいい日である。


「あ、そうだ」

「どうしたの?」

「なんか今日、瑠唯が休みだったんだ。霧崎さん経由で何か聞いてない?」

「……一応ゆるからは、クタクタになったって」

「……ああ、なるほど」


クルスの顔が真っ赤になってることも含めて、そういうことだろう。にしてもあいつ、一体どんな激しいことを……


やめよう、この話は。俺の体温も上がってきた気がする。


「……私は、別に、いいけど」

「それは一体どういう意味なんでしょううかねぇ!?」

「……そのままの意味よ。……バカ」


小声のバカ、頂きました!どうしよう、どうしよう。ああ、やばい。情緒がめっちゃくっちゃになってる!


「今日の夜、寝室で」

「あ、はい」


あ、これ今日いい日じゃなくて最高の日だわ。


その後、俺とクルスは夕飯を食べる時から顔を真っ赤にして夜まで一言もしゃべれませんでした。ちゃんちゃん。


==============


というわけで、3話目です!ここから先は一回明日、今までの人物紹介を挟んで不定期投稿となります!今度は書き続けられるように頑張ります!


それでは次回、週末デート。お楽しみに!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る