虜囚妃のさだめ ~魔王の甘やかな執着~
稲山 裕
第1話 その過程は全て、罪を着せる生贄のため
広くて天井の高い真っ白な
それぞれの長テーブルには、王国とその隣国の
――同盟と、その
初めて着せてもらった豪華な白のドレスとヴェールに、私がまだ、胸を
夫となる人と、私が初めて顔を合わせた時にそれは起きてしまった。
よく考えてみれば、起こるべくして起きたそれは、そのまま我が身の危機へと早変わりして降りかかった。
父である国王に
「この
その
厚みのある赤い
痛みに耐え、うめき声が出そうになったのも我慢して上目に国王を見ると、
「ひどい……私は……最初から使えないって、言ってたのに……」
声にならない声は、辺りのざわつきに消された。
強い魔力持ちだ。などと隣国に
**
今、このザールヴィア王国の王城では、
平たく言えば、政略結婚。
父である国王は、何度も私に言い聞かせた。
「お前の役目を果たせよ? サーリャ。お前の妹であるクレアを
その隣国に対して、私が王族たるゆえんの強い魔力を
向こうに着いてからバレたとしても、環境が変わったせいで
私は、二年前まで港町で過ごしていた、ただの町娘だ。
元々は、エルフではないかとウワサされるくらいに美人なおかあさんと、二人暮らしでパン屋をしていた。
そのおかあさんは四年前に突然、簡単な手紙を置いて、私を残して出て行ってしまった。
当時の私は、十二歳。
『私の可愛いサーリャなら大丈夫だから、お店を任せるわね。おかあさんはちょっと、急に町を
それを見た時は、ショックで半日くらい、立ち尽くしたまま
なんとか気を取り直した私は、「こんな無責任なおかあさんが、
そこから二年ほど。十四歳になった頃に、ようやく一人で生きるのに
「サーリャ様。あなたは現国王の
その言葉
「町一番の
その後に続けた、「
ものすごく腹が立ったけど、町娘
もし感情に任せて文句を言って、私だけじゃなくて町の人にも
ただ、おかあさんのことを娼婦と罵られたのに、
それにしても……父親は居ないと言われていたのに、それが国王だなんて。
野心家で、魔王の国にちょっかいをかけて、負け
かなりの大軍で
……とにかく彼らは、港町でパン屋をしていただけの私を……嫌がる私を、無理矢理連れ出した。
「王宮にお越しいただけないならば、港町がどうなっても知りませんよ?」と。
それから十六歳までの二年間、王女としての教育を詰め込まれた。
しごきと言っていいキツさだったけれど、それはまだマシな方だった。
妹だという一歳違いのクレアからは、しこたまいじめられたから。
見た目は
初めましての
「その年ですでに、顔と胸で男を
悪口と水をかけられるくらいは、まだ良い方で……階段から突き落とされた事もあった。
「身代わりを殺しては
他には、兄が二人いたけれど似たようなものだったし、私はただの身代わり人形なのだと、王宮に来て数カ月の間で理解する事になった。
上の兄はゴミを見るような目をするだけだったけれど、二番目の兄は、クレアと一緒になって嫌がらせをする。
「見た目は良くても、礼儀作法ひとつ満足に出来ないじゃない」と、
港町に帰りたいと、ずっと思っていた。
町の皆は、いつも良くしてくれていたから余計に、本当に辛い毎日だった。
……そんな想いも、この
しかも、私は魔力なんて使えないのに、国でも一、二を
隣国に
死んでしまいたいのと、本当に命の危機なのとは、求めている方向性が違うのに。
私はただ、
だけど、この婚約パーティの時点で、速攻でバレてしまった。
王宮の
国王と王家一族、そして国内の上流貴族達と……婚約相手である隣国の王子、そのお付きの、おそらくはとても
「サーリャ姫よ。そのヴェールで顔を
――終わった。
初めて着せてもらった
しかも、ヴェールのせいで周りもよく見えなくて、皆が私を
――逃げ出したい。
そんな事を思っている間に、彼は続けて、国王に向き直ってこう言った。
「サールヴィアの国王よ! 我等を
まさかいきなり、
……だけど、これで隣国行きは
向こうでバレて、
――そう簡単に考えていた瞬間が、
**
「そんなはずは! まさかサーリャ貴様! 魔力
「――な、何を言って……」
そんな毒薬なんて知らない。
そもそも、魔力があるなんて嘘をついたのは、国王なのに。
「この
そんな――最初からどうなろうとも私に罪を着せようと、そういう
隣国でどうこうなる前に、この国で死を告げられるとは、本当に思ってもみなかった。
ロイヤルナイトに
最後に私が出来る、たったひとつの
「すぐさまその首を
――えっ?
――いま、ここで?
「なんで……そんなひどいことが……」
国王――。もしも生まれ変わったら、あなたも同じ目にあわせてやるんだから。
私から……
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<あとがき>
このまま重い展開……にはなりませんよ~。
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