第37話 採石場に行こう!
「黒いおじさんお帰りなさい、お仕事終わりましたか?」
「エリーゼさんはやっぱり俺の事黒いおじさんって言ってるよな!?」
なんだかおじさん元気がないわ。
「何かあったんですか?」
「ああ、色々思うところがあるが今はいい。実は掘った地面に敷き詰める砕石を手配したかったんだが、持ち主が売ってくれねぇ」
「なぜ?」
「それがよ、砕石を運ぶ手段が無いって言うからエリーゼさんに運んでもらうって話したんだよ。そしたらそいつが馬鹿にした様に笑いやがるから腹が立っちまって喧嘩になった」
何やってるんですか全く!
そりゃあケンカしてる相手と商売はしてくれないわよね。
「なぁんだ、それなら嬢ちゃんが行けば解決するじゃねえかよ」
「あんたは…もしかしてエリーゼさんが言ってたミノルさんかい?」
「ああそうだが…」
黒いおじさんはミノルおじさんをジロっと睨んでる。そんな態度だからケンカになるんだわ。
「おっ?もしかしてアンタが嬢ちゃんを馬鹿にしてギルマスからぶっ飛ばされた人かい?ははっ、アンタも砕石の持ち主と変わらなかったって訳か……成る程そういう事か」
ミノルおじさんが口元に手を当ててフッと笑った。それを見た黒いおじさんがムッとしてる。
もう、ふたりともケンカしちゃダメよ!
黒いおじさんも口悪いけど、ミノルおじさんはそれに輪をかけて毒舌だから心配になるわ。
「いや失礼、アンタいい人だな。嬢ちゃんを馬鹿にされたのが許せなかったって訳だ」
「そりゃエリーゼさんは凄ぇぞ。スキルや能力も凄えが何てったって気風がいい!俺みたいなどうしょうもない奴の肩を持って一緒に働いてくれるんだからな」
「ははっ、確かに。嬢ちゃんは男前な所がある。ならよ、そいつに嬢ちゃんを見せつけてやりゃあいいだろ?」
「ふむ、確かに。よしミノルさん、アンタも付き合ってくれ。エリーゼさんを砕石山に連れて行こう」
「よっしゃ嬢ちゃん、まゆげをカスタマイズして4人乗りにしてくれ。それに乗って行くぞ」
「おじさん達、勝手に話を進め過ぎです!もう!」
こんなレディを捕まえて男前を褒められてもうれしくないわよ!
ふたりとも走ってくればいいんだわ。だいたいまゆげちゃんをカスタマイズしたらゴツくなって可愛くなくなりそう。やだなぁ。
カスタマイズに450万wpも掛かりました!サイズはロングボディで積載量6トン、ダブルキャビンでパワーウインドゥをドア4つともに付けました。荷箱は思い切ってダンプ機能を付けちゃった!
まゆげちゃんおっきくなってもコロコロして可愛いわ。
後ろタイヤがダブルになってグイグイ走ってくれるし、やっぱりまゆげちゃん最高!
いい買い物したなぁ。まゆげちゃんもエンジン音をプルプルさせて喜んでます。
気に入っちゃった!
「あの丘の方だ。昔この辺りに小さい火山があったらしい。だから溶岩が固まって出来た黒い石があるんだ」
私の運転でミノルおじさんと黒いおじさんと一緒に砕石を売ってくれる人のお宅に向かう。
ミノルおじさんが助手席、黒いおじさんが後部座席に座ってる。
「ほお……見えてきたな。こりゃあ安山岩か?砕石にはいい石だ」
「へえ、溶岩が固まって出来た石なんですね!なんか希少な石なんじゃないか心配になってきました!」
「ははは、安山岩はかなりメジャーでベターな石だ。どこにでもあるから穴の埋め戻しや基礎の下地にゃ最高さ」
そんな話をしていると一軒のお家が見えてきたわ。
まゆげちゃんのエンジン音が聞こえたのか中から人が飛び出してくる。
「か、カチコミだぁ!」
「違うぞ!客だ!」
「なんだ貴様、また来たのか!」
あわわわわ!ケンカしちゃダメ!
「み、ミノルおじさん、ケンカを止めてください!」
「ははっ、ほっとけよ。俺が間に入っても余計に揉めるだけだ」
ミノルおじさんがあてにならなかった!私がなんとかしなきゃ!
私は今にも掴み合いになりそうなふたりのおじさんの間に入った。
「こ、こんにちは!私はエリーゼです!今商業ギルドのお仕事で基礎工事をやってます。あなたの持ってる砕石っていう土を分けて欲しかったんですけど、あなたは私が小さいせいで騙されてると思ってしまったと聞きました。ごめんなさい!」
目の前のおじさんに頭を下げる。ケンカをやめてもらって砕石を分けてもらうには謝るしかないもの。
「確かに私11歳になったばかりでまだ信用もないけど一応ギルド会員なんです。今までやった仕事はおうちの商会の荷物の輸送とカバルや酪農村までの道の整備、それと今やっているギルド倉庫新設のための基礎工事です。その基礎工事にあなたの持ち物の砕石が使いたかったんです。どうか分けていただけませんか?」
頭を下げたあとはお願いあるのみ!お父さんが言ってたわ。依頼や交渉は神聖なものだって。ギルドマスターさんも商業の魂が大事って言ってた。
「あんたがあの道を作った?嘘だろ?信じられない」
砕石のおじさんは胡乱な目で私を見てる。やっぱり信じてもらえないか。
「おじさん、私を信じなくてもいいですからギルド倉庫の完成のために砕石を分けてください。あれができたらみんな食べ物や着る物、住むところを安定して手に入れることができるんです!みんなが幸せになれるんです!」
「うむむ…いや、信じないって訳じゃないんだがな…どちらにしろ砕石を運ぶ方法がないんだ。それに荷馬車に積むにせよ人はいる、その人もいないんだよ。だから分けてあげられないんだ。すまんな」
あれ?砕石のおじさんの雰囲気がちょっと変わってきた?
それなら私の重機達を見せて、砕石を積んでみせれば納得してもらえるかも!
「おじさん、それなら今から私がスキルで砕石を掬って積み込みをします。ちゃんと積めたら分けてもらえますか?」
「出来る訳ないのに諦めの悪い嬢ちゃんだな。ああわかった、それならやってみろ。積めるなら好きなだけやるよ」
おじさんは私を見てフフン、と笑ったわ。でもこれでお許しが出た!
「ほんと?ありがとうございます!ミノルおじさん、黒いおじさん、お許しが出ました!さっそく積み込みましょ!」
積み込んでいいと言われたならこっちのものよ。早速支度しなくちゃ。
私の声を聞いておじさんふたりも元気いっぱいよ。
「やったなエリーゼさん!根こそぎ持っていってやろうぜ!」
「よしきた!それなら嬢ちゃんはユンボを購入して砕石を掘り起こせ!掘り出した砕石は俺がかけるでまゆげに積んでやる!」
ん?ミノルおじさんから知らないワードが出ました。
「ユンボ?」
「ユンボってのは油圧ショベルの愛称だ。嬢ちゃん、油圧ショベルの出番だ!掘って掘って掘り起こせ!」
ああなるほど油圧ショベルのことか!了解しました。それならでっかい油圧ショベルをもらっちゃお。
ワーキングポイントはまだ5,000万近くあるわ。2,000万wpの13トン油圧ショベルと交換しちゃお!
「行け!重機油圧ショベル召喚!正面突破よ!」
目の前に銀色の壁が反り立ち中から現れたのは真っ赤な鉄のボディ。
クローラーの上にちょこんと乗ったキャノピーに対して異様なほど長いくの字に曲がったブームとさらに長いアーム、先に備え付けられたでっかいバケット。お腹には真っ黒な排土板を抱え込んでる。
まさに真っ赤な鉄のドラゴン!
「……嬢ちゃん、その口上どこで覚えたんだ?」
知りません、魂の叫びですから!イセカイ界トオォォタル!!
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