第4話 刈りの成果とスケルトン

 日が暮れるまで草狩りに明け暮れました。

 どうも、農民です。


 なんという事でしょう。

 草刈りばかりやっていたらレベルが12まで上がりました。

 加えて、一体から二枚以上刈れることもあってか、ギレフ草とアルベル草に関しては百枚以上集まりました。

 いや~素晴らしい成果ですね。


==========

【アルベル草 等級:G 品質:C~A 分類:薬草】

詳細:リンファーレにおいて一般的な薬草。

そのまま食べると10秒に2ずつ体力を回復する。効果は二分間続く。

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 アルベル草は所謂、リジェネ回復草だった。

 βではリジェネポーションはNPCの屋台で販売されてはいたようだが、肝心の素材が分かっていなかった。

 恐らくこのアルベル草がリジェネ薬の素材。


 しかし……なぜβのプレイヤーは気付かなかったのだろう。

 ああ、あれか。この魔物、背の高い草を注視して近付かないとエネミー表示されないもんな。

 ……気付いたけど秘匿していたプレイヤーがいるのかもしれないが。


 流石に今くらいになれば俺以外のプレイヤーがもう発見しているだろう。

 後で生産板覗こう。


 因みになぜ俺がそんなに草刈りに没頭したか、それは草を刈る瞬間の感触が気持ちよくて仕方なくて。それにレベルアップまでするんですよ、そりゃもう有頂天になって狩り続けましたよね。うん。

 そしてこのリトル・グラスは攻撃をしてこない。草原にいる他の魔物は攻撃してくるのにこの草は攻撃してこないんですよ。そりゃもう一方的な刈り放題だよね。


 俺がそんな事やっている内に、最前線プレイヤーは街を囲む草原から、各方角にあるフィールドに進出したそうです。

 その名称はマイフルアの森、西バテュラの森、シルフルの湖、北の坑道だ。フィールド適正レベルは8だそう。今の俺でも十分倒せそうではあるが、何より周りのプレイヤーより俺はスキルが育っていない。


 なぜなら俺、ここまでの戦闘で一回も剣使ってない。

 そんなんでそこのフィールドの魔物を斃せるわけがないと俺は思う。


 なぜか生えた【鎌術】とかいうスキルとかは4まで育ったけど、この草刈り鎌で獣系魔物を斃せるわけがないのだ。大鎌なら違うだろうが……。


 なので俺氏、【剣術】スキル育てます。


 夜だというのに、魔物狩りに勤しむプレイヤーを横目にフリーの魔物をさがす。

 すると目に入ったのは、ぎこちなく歩くスケルトン。


 一瞬、草原にスケルトン……?Why?となったが、夜だからアンデットが湧いたんだろうという、単純明快で簡単な思考に至り普通に鑑定する。


 どうやらレベル5の骸骨スケルトンであるらしい。


 通りで周りのプレイヤーが見向きもしないわけだ。

 ここは完全初心者用の狩場みたいなもの。俺みたいなレベルは二桁入ったけど、スキル育ってません勢がいるような場所ではない。

 レベル5以上のプレイヤーは恐らく西の森や各方角のフィールドにでも行っているのだろう。

 つまり、5レベスケルトンを相手に勝てる自信のあるプレイヤーはあまりいないという事。


 ここは俺が間引いてあげようじゃあないか。


 俺はニタリと口角を上げ、スケルトン目掛けて突撃する。

 するとスケルトンも気付いたのか振り返って、及び腰気味にボロボロの剣を構えてきた。


 俺も腰から剣を抜き、恐らく周りから見たら不格好な形で剣を構えながら走る。


「どぉっせいぃ!」


 俺はそんな掛け声と共に、上段から剣を振り下ろす。

 するとスケルトンは咄嗟に剣でガードしやがった。


 ならその剣ごと叩き斬ってやる。

 そう心の中で意気込んだは良いものの――



 ――結果、盛大にスカッと外した。



 それはもう綺麗な空振りをかました。


「へ?」


 俺は今相当間抜けた顔を晒しているだろう。

 一瞬思考が停止する。


『カタカタ』


 スケルトンの下顎と上顎が噛みあう音が気つけとなり、思考が働き始めるがもう遅かった。

 スケルトンのボロの剣が俺の身体に迫っていたのだ。


「っ~~! いってぇ!!」


 嘘だろ!?痛覚初期設定のはずなのにこの痛さ!まるで横腹を擦りむいたみたいだ!!それに服、剛糸のTシャツの効果は!!?


 俺は攻撃を食らったお返しにと腕に力を入れてスケルトンを睨みつけた。

 よろけた態勢のまま俺は横薙ぎに剣を振るう。するとスケルトンは咄嗟に剣でガードしてくる。


 またそれか!芸がねえな!!


 俺の剣がスケルトンの剣に触れる寸前により一層力を込める。

 するとどうだろうか、いともたやすくボロの剣が斬れた。


 そのままスケルトンの腰から上に掛けてスルリと刃が入っていく。


 ボロボロと崩れ落ちるスケルトン。

 そして例の草よりも多い経験値が身体に染み込むという、なんとも形容し難い、されどもどこか心地の良い感覚が来る。


【経験蓄積によりスキル【見切り】を獲得しました】

【経験蓄積によりスキル【駆け足】を獲得しました】

【熟練度が一定値に達しました。【剣術】のレベルが上がりました】


 おおっ! 戦闘に役に立ちそうなスキルが手に入ったぞ。

 【剣術】のレベルも上がった。

 攻撃は食らってしまったが、スケルトンと戦ってよかったと言える。

 結果オーライである。


 取り敢えずドロップ品――いや、死体を拾わなければ。


 このIPOでは、『リアルな異世界を楽しむことができる』の謳い文句通り、結構様々な所がリアルだ。

 そのリアル要素その一がこれ。


 倒した魔物、丸々ドロップ。

 しかも攻撃した部分はしっかり傷が入ってる。

 おかげさまで、こういうスケルトンとかは骨が崩れてバラバラになっているので非常に拾いにくい。


 俺は今まさにそれを実感しながらそんな事を考える。


 細々した骨を拾っているとまた通知が入った。

 見てみるとどうやらまた新たに【解体】というスキルを覚えていた。


 スキルの詳細を流し見した感じ、魔物や動物の死体を解体できるというスキルだった。うん、まんまだな。

 どうやら死体に触れて魔力を流すと、解体ナイフも入れずに解体でき、即座にアイテムに変わるらしい。


 普通に有用スキルだ。有難い。

 と言ってもこのスケルトンの死体には【解体】は使えない訳だが。


 せっせと骨を拾う事三分少し。

 自分のお腹が減ってきていることに気付いた。


 俺はインベントリに手を突っ込もうとして、今まで合間に満腹度回復用として食べていた、棒状のクソマズクッキーのような非常食がなくなっていることに気付く。


 おかしいな……。最初見た時は五本は入っていた筈だけど……。

 俺そんなに食べてたっけ。仕方ない、思えばギルド登録とか諸々のテンプレをこなしてないし、一旦街に戻るか。


 俺はそう考え膝立ち状態から立ち上がり、街の市壁に向かってなるべく満腹度を減らさないように心掛けながら歩き出した。


 満腹度が0になると継続ダメージを食らい始めるからな。

 今後しっかりと気を付けなければ。


 

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