にっき

桐崎りん

おにいちゃん

5がつ15にち(もく)

きょうわおかあさんに、ひゃっきんでのーとをかってもらいました。うれしかったです。こののーとにまいにちにっきをつけないさい、とゆわれました。きょうはがっこうにいきました。たのしかったです。



5がつ16にち(きん)

きょうわがっこうにいきました。あにいちゃんといっしょにいきました。うれしかったです。



5がつ17にち(どう)

きょうわがっこうわおやすみでした。おにいちゃんとあそびました。こうえんであそびました。たのしかったです。



5がつ18にち(にち)

きょうわがっこうのおともだちといっしょにあそびました。いっしょにおかいものにいきました。たのしかったです。

おにいちゃんがいえのまえでまっていました。



5がつ19にち(げつ)

おにいちゃんがあそびにきました。いっしょにおにんぎょうでかぞくごっごをしました。たのしかったです。

おかあさんわ、おにいちゃんがかえってからかえってきました。おしごとがながくなりました。



5がつ21にち(すい)

きのうにっきをわすれていました。きょうわかきます。おにいちゃんにちょこれーとをわけてもらいました。おいしかったです。おにいちゃんにこうえんであいました。うれしかったです。




5がつ22にち(もく)

きのうわよるなかなかねられませんでした。おにいちゃんがきてくれて、ねれました。きょうもおにいちゃんとあそびました。きょうは

いっしょにてれびをみました。おもしろかったです。




わたしはここまで読んで、ここまで読まずとも、とても違和感を感じた。


母が亡くなり、父は1人で住むには大きすぎる一軒家を手放し、2LDKのマンションに引っ越すというので、大学で授業がなかったこともあり手伝いに来ていた。


我が家に着くと、壁に寄られたいくつものゴミ袋が目に入った。


使うものが詰まったダンボールは引っ越し屋さんが持って行ったらしい。


家はがらんとしていた。


わたしが生まれたときに買ったというこの家は、わたしが3年前に家を出るまでずっと住んでおり、ここにきて少しだけ寂しさが込み上げてくる。


父に「棚の隙間に落ちてたぞ」と『にっきです。』と表紙に書かれたノートを手渡された。


たしかに、それはわたしの字だった。


「ありがとう、お父さん」わたしはそう言って、掃除の邪魔にならなさそうなところを選んで床に座った。


座る類のソファーやイスはもうなかった。


そして、この日記を読み始めたのだ。


でも、違和感がある。


この何回も出てくる『おにいちゃん』は誰なのだろうか。


わたしは一人っ子なのに。



7がつ19にち

きょうはおうちでおにいちゃんとおねえちゃんとあそびました。たのしかったです。

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にっき 桐崎りん @kirins

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