じごくのマーチ
ツチノコのお口
第1話 地獄小隊行進
「小隊、進めーーーーッッ!!」
隊長の声と同時に、辺りには整然とした足音が響く。我々、地獄小隊の物だ。
ザッザッザッザッ。我々は、この音とともに一日を迎え、心を整える。
一縷のズレもないこの足音は、我々の血のにじむような努力の上に成り立つ。ハヤト・ロイド隊長を中心に、一分一秒の自由時間も許されず、常に訓練を重ね、戦争のためだけに生きている存在。それこそが、我々・地獄小隊なのだ。
辺りは足音に加え、微かに銃声も混じるようになる。悲鳴も聞こえる。
そして、私達は改めて再認識させられる。ここは「戦場」なのだ、と。向かう先はヨーロッパ連合国・首都スコッツ。ヨーロッパ連合国の成立の是非を巡る争いから始まった戦争。
ヨーロッパ連合国やアメリカ、アフリカ諸国からなる連合国に対し、ヨーロッパ連合国の成立を否定する、ソビエト連邦、朝鮮国、ベトナムなどの同盟国。
我が故郷は、アメリカのジャポネ州。アメリカ唯一のアジアに位置する領土であり、公用語はジャポネ語。かつては、日本国という独立国であったそうだ。
我々地獄小隊は、ジャポネの志願兵によって構成された特殊部隊だ。
「止まれ!!!」大声では無い。それでも、隊員約10名全員に聞こえるように、隊長が告げる。
辺りが静まる。足音もピタリと止む。風以外、空気の動きを感じることは無い。振動は、一切感じない。
ふと、隊長の顔を見ると、異常事態が起こっているかのように周囲の確認を目の移動だけで行う姿があった。まるで何かに警戒しているようであった。一体、何に……
「行くぞ。進め!!!」5分ほどその場に待機した我々は、その合図とともにまた動き出す。
揃った足音が響く中、微かだがズレた物が聞こえた。そう、はっきりと聞こえたのだ。そして、それは隊員全体が気づく。
我々地獄小隊は即座に屈み、辺りを見回した。音の主はわからない。なんの音だったのだろう。
ドサッ。やはり音がひとつ。
ドサッ。足音か?ドサッ。いや。ドサッ。これは違う。
ドサッ。これは……
「狙撃された!」後方から、隊員の声が聞こえた。やはりそうだ。これは、銃声だ。
「伏せろ!」今度は大声で、隊長が叫ぶ。
しかし、無惨にもそれと同時に1人の呻き声が聞こえる。戦場で仲間が死ぬ可能性がある事くらい当たり前だというのに、多少の悲しみが私を襲う。それに、地獄小隊は戦争のための部隊だ。全体主義、失う命より、残る命を優先する。たとえ殺された彼が我々にとって大切な仲間であろうとも。
狙撃手の命中力は凄まじかった。我々地獄小隊の人数はどんどんと減ってゆく。死ぬ。死ぬ。死ぬ!
私は、戦争で戦うため生きてきたのだ!何を今更、死を恐怖しているのだ!?
ドスッ
「お目覚めですか?」
なんてことだ!私は戦場で眠っていたというのか!?
「さぁ!あなたの選択次第ですよ!」
目の前で謎の人物が何か言っているが……私は寝ぼけていて何を言ったのか聞き取れなかった。
「すまない、もう一度言ってくれないか?」
「だーかーら!天国に行くか!地獄に行くか!選ばせてやるって言ってんの!」
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