時代や地域によって美の基準は変わるもの。主人公シェリアータの世界は、我々の世界でいうイケメンが全否定されています。中性的な顔立ちや細い体は「気持ち悪い」と老若男女から唾棄され、いかに横幅や厚みのある体を作るか、いかに体毛を濃くするかに男たちは腐心しています。
シェリアータは、この世界においては珍しい価値観の持ち主で、イケメン好き。お見合い連敗中の美しいお兄様がすっかり心を病んでしまったことから、一念発起! イケメンの地位向上のため、迫害されるイケメンたちをプロデュースし、その魅力を知ってもらわんとアートデュエルへ乗り込みます。その演目は、なんと2.5次元舞台! アートデュエルとは、貴族たちがお抱え芸術家を披露して点数を競うサロンの催し。けれど、アートデュエルの主催者の一人娘リディアは、病的なまでにイケメンを嫌悪していて……。
私自身は、世間で「イケてる」と思われる男性より、ゴツムキむさい系が好きなので、この世界ではとても息がしやすそうだな、と思いました。けれど、この物語で起きていることはイケメンの基準が逆転しているだけで、現実世界と同じだなんですよね。
ねぇ、どうして「どうせイケメンしか見てないんだろ」って言うくせに、私が「これが好き」とゴツムキむさ男を見せると、「趣味悪ww」って嘲笑するの? ねぇ?
すみません、切ないことを思い出しました。
閑話休題。
主人公シェリアータは、そんな世間の声に負けず、自分が魅力的だと感じているものを素直に応援し、更に周囲にも魅力を知ってもらおうと奮闘します。そして、敵対者として登場したアンチイケメン派のリディアにも、納得の理由があるのです。
物語が終盤に進むにつれ、謎が解けていくのもまた心地よい作品です。
何より、2.5次元舞台への愛が詰まった作品です👍✨