8月7日の夢の中
天川裕司
8月7日の夢の中
タイトル:8月7日の夢の中
本当に怖い夢を見た。ついに、原爆(水爆?)が落ちる夢である。
それまでは普通に暮らして居た。
俺は教会の面々、従兄妹達、そして近所の人達と一緒に居たらしい。
そうして居る時に、街中にゆっくりとだが、
原爆のミサイルが落ちるところを皆で一緒に目撃したのだ。
まるでそのミサイルは留まって居るかの様に見えた。
でも着実に動いており、地表スレスレまで来て、
ボンンンンンンンン…!!
とあの独特の音を立てて思いきり炸裂した。
その爆発を皆で見たのは地下壕の入り口で、
爆発した瞬間、そこから思いきり全速力で、地下三階にまで俺達は逃げて居た。
俺の父母も居た。父がいろいろしてたのを良く覚えて居る。
小学校の級友だった女子のオバちゃん・或いはその級友に似た女も居り、
彼女も他の誰それとまだ気丈に(原爆が落ちる前の事なんか)
出来るだけ楽しそうに喋ってた。
他の女子達(見知らぬ人達が多かったが)も同じ様に他の人達と出来るだけ
固まって共に居り、少しでも嫌な事を忘れようとして居た。
俺も同じで、俺の周りに居た者達と同様、
少しでもあの嫌で怖い原爆から離れようとして居た。
そうして居た時、ちょっと可愛いショートヘアの若い女が、
煙草を三箱手に持って居るのを見た。
俺の手元にはその時吸って居た一箱しか無く、
「あ、せめて煙草だけでも俺も買っとかなきゃ…!」
と思い、すぐ買いに行こうとした。
しかし煙草の自販機は確かここのデパートの二階…いや一階フロアにあった筈。
地下二階ですらあんなに揺れて煙が入ってきそうだったのに、
一階フロアなんかとても無理だ、今行ったら確実に被曝する…と信じられ、
やはり行けなかった。
そう俺達は、何か大きなデパートの地下壕(こんな時の為に造られたシェルターだったと思う)に避難して居り、そこはデパートだった。
「くっそう〜〜」とそれでも煙草を諦めきれず、
二階まで行ったのだろうか…いや確かまだ地下三階フロアでちらほら見回って居り、
そこに辛うじて自販機があってその自販機の上の棚の所に、
煙草のケースや箱が幾つか置かれてるのが目に付いた。
すぐさまそこへ跳び付き、自分が吸える物はないか??と探した。
もしかすると自分がこれ迄に何気にそこに置いて居た、
忘れ物的な形でマイルドセブン1ミリロングがあるんじゃないのか!?
なんて思ったが、全部、他人(ひと)のだった。
やはりこんな時でも盗む事は出来ず、そのまま本当に仕方なく通り過ぎる。
その前後の場面で、俺はこれまでやって来た私事・仕事の事を、
牢屋の様な地下シェルターの一室で考えて居たのだ。
そこには避難した全員が居り、各自の部屋(牢屋みたいな部屋)に
割り当てられてたみたいだが関係なく、近しい者同士が集まって居り、
俺が居た部屋にも結構な人数が集まり、そこに俺の父も居た。
従兄妹のオジちゃんオバちゃんも何人か居たかも知れない。
そこでこれから先の事をいろいろ考えて居り、俺は自分の仕事・私事のことを、
父などもこれから先の事ともうどうしようも無いと言う諦めと、
他の隣人・兄弟姉妹達も自分達の事、これからの事を同じ様に考え、感じ、
不安と恐怖に思え、一つの諦めと同時に「どうやって今を明るく過ごして行こうか」と、
その事ばかりを考えて居た。
もう、少し先の事を考えると、間違い無く絶望なのだ。
やがて地上(うえ)の放射能はここへも来る。徐々にやって来て、
今は元気でもここに居る皆が原爆病でやられてしまう…!
ときっと誰もが思って居た。
原爆を撃ち込んで来た国はよく判らなかった。
ただ日本から近くの国、という事だけはその夢の設定から判った。
そんな時、俺達は不意に外に居た。昼間で良い天気だった。
暑さもそれほど感じない。どちらかと言うと涼しかった(クーラーを付けて寝て居たからかも知れない)。
何人かと一緒に外に出て来て居り、遠くからあの時の広島の街を見る様に、
さっき原爆が落とされたその街の光景を見て居た。原爆は何発も落とされたらしい。
一緒に避難して居た専門家の様な男が、
「あんなに落ちたんじゃ、もう建物は別の何かに変わってる。再び生活出来る様になるのはもう随分先になるんだろう…」
とかなり寂しそうに言って居た。
それを地下シェルターに避難してる何人かが俺と一緒に聞いて居た。
でも外に出て遠くから街中を見る限り、火は何処にも挙がって居らず、
煙こそ遠目にやや細く上がって居たが、長閑なものだった。
本当にさっきあんな大きな原爆が落ちたのか?!と思わされる程の光景で、
それでも皆、
「こんな遠方だと言えど早く戻らなきゃ危ない、放射能にやられる…!」
と急ぎ足で戻って居た。
その戻る途中で俺の足元に、変な土蜘蛛の様な嫌な虫が現れた。
土蜘蛛より何回りか小さな虫だ。
少し粗目(ざらめ)の黄な粉を塗(まぶ)した様な姿をして居り、
そいつは俺の足に向かって跳び付こう、噛もう、としたのだ。
まるで毒蜘蛛の様にさえ思えて来て俺は少し怖くなり、同時に怒りが湧いて、
そいつを踏み潰そうと脅した。
でもそいつは怯まず、なお俺に向かって来そうだったのだ。
そいつを取り敢えず躱して前に進むと、今度は少し離れた所を歩いてた女の子が、
その蜘蛛と対峙する事になった。
その女の子も「キャッ」とか言った感じにその蜘蛛を敬遠してたが、
その子はもしかするとあの煙草を取り敢えず三箱手に持って居た
ショートヘアのあの子だったかも知れず、中々気丈で、驚くばかりか、
その蜘蛛を撃退して踏み潰そうとかしてたのかも知れない。
でも何はともあれ、あの落ちた複数発の原爆の事を
皆忘れられず(忘れられる筈も無く)、
今とこれからをどうにかせねば成らないと、
本当に暗い気持ちのまま、ずっと考え込んでた様だ。
俺もそうだった。全く同じである。
でもやがて…と考えると誰もが本当に暗い気持ちになってしまい、
救い様が無く、先の事を考える事すら嫌になってしまう。
その気持ちと状態等が本当に良く分かってしまった。
寝る前に俺はあの『はだしのゲン』を読んで居た。
最近になり、この『はだしのゲン』を数冊読んで居たのだ。
八月六日が来る数日前から確か不意に急に読みたくなり、
そう、ご飯のおかずにといつもの様に漫画を読むあの感覚で
その『はだしのゲン』を読んで居たのだ。
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=ZxOahSQ0y2Y
8月7日の夢の中 天川裕司 @tenkawayuji
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