第5話

次の日の朝、妖國は早く起きて、昨日借りた傘を手に持ちながら美大に向かって歩いていた。雨が降り続いている中、妖國は坂道の曲がり角を曲がりながら、確かこのあたりの坂だったはずだと考えていた。


突然、妖國の頭に花緒の声が響いてきた。驚きながらも立ち止まった妖國が振り返ると、淡い白いスカートと綺麗にアイロンが掛けられたTシャツを着た花緒が、微笑みながら立っていた。花緒は、雨に濡れた街並みを背景に、まるで幻想的な存在のように見えた。



花緒「妖國さん、おはようございます。」


妖國「花緒さん、おはようございます。」


花緒の笑顔が妖國の心に温かさをもたらす。


妖國「あの傘…」


花緒は穏やかに微笑み、手をひらひらさせながら言った。


花緒「いいのです、その傘。差し上げます、笑」


妖國は思わず微笑み、心の中で嬉しさを感じる。


妖國「笑…ありがとう。」


二人はしばらく無言でお互いを見つめ合い、妖國の心に静かな安心感が広がった。雨の中でのこの瞬間が、特別なものに感じられた。


花緒が手を振ると、妖國もそれに応えながら、美大に向かって再び歩き出した。心の中で花緒との再会が、これからの展開に大きな影響を与えることを予感しながら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る