ありふれすぎてて面白くない…からノイローゼに

天川裕司

ありふれすぎてて面白くない…からノイローゼに

タイトル:ありふれすぎてて面白くない…からノイローゼに


俺の友達はシナリオライター。

俺もシナリオライター。

2人ともホラーサスペンスのシナリオを書いていた。

時々シナリオを見せ合いっこして、

お互いに批評したり、それで切磋琢磨しあったり

まぁそれなりによろしくやっていた。


でもそれは過去のこと。

ある時からその友達のシナリオが売れ始め、

その友達は俺は見下すようになったのだ。


友達「はっwそんなありふれたシナリオ、よく書けるなぁ〜wそんなんだからお前のはウケが悪くて売れないんだよ〜w」


さんざん笑ってくれた。


「ったく、ちょっと前までは自分も似たようなモン書いてたくせに。ちょっと売れたからって速攻で態度変わるなんて最低だよ!」


豹変した友達に、俺は心の中で散々愚痴っていた。

まぁ確かに友達の言う通り、俺が書くシナリオはやっぱりベタなもの。


神木の中から血が出てきたり、

鏡の中に誰か見知らぬ人が映ってたり、

学校の怪談じみた話や、

都市伝説的なオカルト話とか、そんなんばかり。


友達はそれからさらに手の込んだ

ホラーシナリオをどんどん書き続け、

もっともっと売れていった。


俺はもうヤケになっちゃって、

その友達を主人公にした

ホラーシナリオを書いてやった。

またベタなヤツで充分。


普通に本怖の形で、

幽霊がその友達に取り憑く話を書いてやったのだ。

ベランダにその幽霊が不意に現れる。

鏡の中にその幽霊が映ってておいでおいでをしている。

そんな形で簡単にしめてゆく。


「まぁこれもまた売れないんだろうなぁ〜。現代人の目は肥えてるから」


そんな事を思ってると、それからわずか数日後。

その友達が顔色を変えて俺のところに飛び込んできた。


友達「オ、オレ…何か取り憑かれてるのかも…」


「え?」


友達「いやなんかさ…鏡の中に変な女が映ってたり…ベランダに変な女の輪郭が立ってたり……そんなの見ちまったんだよぉおお!!」


友達は泣き伏すように

そこにうずくまってしまった。


ちょっとびっくりした。でも、

「…てか、俺が書いたあのシナリオ通りになってる…?」

思ったのはまずそれ。


友達はそれから精神病院へ通うようになり、

仕事は辞めてしまい、今では廃人のようになって

そこの病室のベッドの上でずっと膝を抱えて座ってる。


でもその友達、あれだけベタだって馬鹿にしていた

そのエピソードに実際ちょこっと遭っただけで、

あれだけ狂ったようになってしまったのだ。

いや実際、狂ってしまった。

その友達の主治医の話では、

「いつ社会復帰できるか分からない」との事。


…実際、そんなもんなんだよな。

みんなSNSとか小説・ドラマや映画なんかで、

怖いネタ見過ぎてるから目も心も肥えてしまって、

もっと上、もっと上を目指す挙句に、

実際遭ったら狂っちゃうようなそんな怖い事でも

ベタネタだって片付けて、

そこにあえて恐怖を見ないようにしてるだけ。


友達がその良い例だ。

オカルト・都市伝説的なベタネタでも、

実際遭ってしまえば人は狂ってしまう。

人はそんな強いもんじゃないんだから。


正直を言えば、その友達に、

「今の自分のザマを見ろ」

って気持ちが心の中に湧いたのと同時に、

「やっぱりベタネタでも書いてく価値は十分にあるよね」

って事で、俺はその友達とは対照的に

これまで書いてきた自分なりのシナリオを

もっと勢いよく書くことが出来てしまった。


この少し不思議な事がきっかけになり、

その友達と俺はそれを起点に結局、

正反対の道を歩むことになったわけだ。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=nbjH5F9EJbQ

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