無職で楽な人生を求める無責任な運だけ領主誕生
イコ
プロローグ
序章
あ〜働きたくない。誰しも一度はそう考えるだろう? 仕事をしないまま、溢れるほどのお金があって、遊んでいるだけで人生を過ごすことができれば、どれだけいいかって……。
だけど、年齢を重ねると気づくんだ。
いつまでも遊んでいるだけじゃ生活ができなくなるし、困ることになる。
だから、ほとんどの人は堅実に生活の基盤を作って、安定した職につき、自分に見合う相手を見つけて結婚していくんだろう。
それは家族を作ることで、自分は幸せな時間を過ごしていると実感するために……。
僕はそれが、なんだか嫌だ。
だから、反抗して親の元で仕事もせずにダラダラと過ごしたいと思っていた。
だけど、現実はそれを許してくれるほど甘くはなかった。
「ジャック、ヴァレンス帝国軍の下級兵として志願しておいた」
「なっ! 父さん、僕を殺す気!?」
我がヴァレンス帝国は、現在破竹の勢いで侵略戦争の真っ最中だ。
兵士になれば、戦場に送られて本当に死んでしまう。
「そうだ」
「えっ?!」
「俺は大工だ。職人として働いてきた。戦争にも工作兵として参加したことがある。お前を育てるために、多くの時間を費やして仕事をしてきた。だが、お前は18歳になっても働かない。それは周りの者たちから見れば俺の育て方が悪かったと言われる」
どこか疲れた顔を見せる父さん。
父さんが大工仕事をしている姿が好きだった。
僕のために汗水流して働いてくれたのは知っているけど、その辛そうな姿を見たから働きたくないと思った。
「お前の仕事を決めてきた。後は勝手に生きるなり死ぬなりすればいい。これが親として、してやれる最後の務めだ」
父さんは僕に最低限の荷物をまとめさせて、家を追い出した。
母さんはずっと前に亡くなっているから、父さんに追い出されたら僕はいくところがない。
友人たちは学生生活を終えて、それぞれの道を歩み始めている。何よりも、僕が父さんに追い出されて帝国兵に志願したことは、近所の人々も知っている。
つまり、俺は逃げられないということだ。
「ハァ〜働きたくない」
だけど、物は考えようだ。
ヴァレンス帝国は現在、他国への侵略戦争を仕掛けて10年が過ぎている。領土は増え続け、帝国の力は大陸全土に及ぼうとしている。
このまま行けば大陸を制覇して、覇権を取れるのではないだろうか? そうなれば、きっと戦争は近々終わるはずだ。ということは、帝国兵として務めていれば、国に従事したことになるから、給料は安定してもらえて、年金も手に入るはずだ。
それに、もし敵将の首でも挙げられたら、一生遊んで暮らせる階級になれるかもしれない。そんな安易な考えを抱きつつ、俺は重い足取りで帝国兵の入寮手続きをすることになった。
ヴァレンス帝国は、今から約100年前に建国された若い国だ。
初めは小国だったが、名王が誕生して侵略戦争を開始した。
隣国との戦争に次々と勝利し、領土を拡大してきた。
その強大な軍事力と、徹底した統治体制で、大陸のほぼ全域を支配下に置いている。帝国の国是は「全てを征服し、支配すること」。そのため、兵士の募集も絶え間なく続いている。
僕が入寮する帝国兵の宿舎は、広大な帝国軍の施設の一角にあった。
高い塀に囲まれ、整然と並ぶ兵舎。そこには、新兵たちが厳しい訓練を受け、精鋭として育成されるための施設が揃っていた。
入口で手続きを済ませると、担当官が僕を冷ややかに見つめた。
「ようこそ、ヴァレンス帝国軍へ。これからはお前も帝国の一員として、しっかりと働いてもらうぞ」
僕は何も言わずにうなずいた。心の中では、これからの厳しい生活を思うとため息が出そうだったが、表情には出さなかった。
宿舎に案内されると、そこには同じく新兵として入寮してきた者たちが集まっていた。彼らの中には、志願して誇らしげに胸を張る者もいれば、僕のように不安そうな表情を浮かべる者もいた。
部屋に入ると、簡素なベッドと机が一つずつ置かれていた。
僕はベッドに腰掛け、これからの生活に思いを馳せた。
「こんなところで、一体何が始まるんだろう…」
だが、すぐに現実に引き戻された。宿舎のドアが開き、担当官が再び現れた。
「お前たち、これから訓練が始まる。覚悟しておけよ!」
そう言われた瞬間、僕は逃げ出したい気持ちを必死に抑えた。
だが、この選択肢はもはや僕にはなかった。
「…ハァ、仕方ないな。とにかく、無事に過ごせればそれでいいんだ」
こうして、僕の帝国兵としての生活が始まった。
ヴァレンス帝国のために、いや、むしろ自分のために、何とかしてこの状況を乗り切るしかない。
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あとがき
どうも作者のイコです。
お盆休みですね。
皆様の移動時間に暇つぶしになればと思い、新作を投稿します。
今回も思いつきなので、プロットなどはありません。
気楽に読んでいただけると助かります。
どうぞよろしくお願いします。
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