第31話

 今回、共感にこだわった感想を書いているのには理由があります。昨年受賞された方が、最近のライトノベルや新文芸で大事なのは読者からいかに共感を引き出すか、ということを編集の方が仰っていたと、書かれているのを読みまして。なるほどと思い、改めて共感性につて調べまとめ、今回の感想を書くときに活かそうを思いました。

 そんな四月中旬、犀川よう様から『さいかわ卯月賞』で感想を書いてほしい、というお願いが、近況コメントに書かれていました。

 推敲に励んでいた三月くらいに、純文学とエンタメについてコメント書いたりしてたくらいだったので、なぜ私にそんなお願いがくるのかしらんと思いながらも、頼まれたら嫌とは断らない性格なので、引き受けることにしました。その翌日に風邪を引いて倒れ、最悪な状況で関わったことは申し訳なかったと思います。

 普通の風邪でも一か月くらい引きずるのがいつもの事だとはいえ、寝込みながら短期間で60作以上の感想を読んでが手短にまとめた感想を作り、テーマ「春」を活かしながら良い出来の作品を各ジャンルごとに一作ずつ選んで感想を書くのは、かなり大変でした。とはいえ、読者が共感できるように書けているのかをみて作品を選ぶ機会を持てたのは、実にいい経験だったと思います。


 創作において、主人公に読者が共感できるか、感情移入してもらえるかどうかが、成功の鍵を握っています。

 一般的に共感とは、他人の気持ちや考えを自分の立場に立って理解し、同じように感じること。つまり、相手の感情を自分のものとして捉える能力を指します。

 一方で感情移入とは、作中のキャラクターや世界観に没入し、その感情を自分のものとして体験することです。読者がキャラクターの気持ちを自分のものとして感じ取り、その世界観に没頭すれば、感情移入といえます。

 まとめると、共感は「他者の気持ちの理解と同情」を意味し、感情移入は「作品世界への没入と自己投影」を指します。

 創作でいわれる共感は、主人公と読者をくっつける役割を果たしており、読者が主人公の気持ちに寄り添い、自分と重ね合わせることができれば、より深い感情移入が可能となるのです。

 いわば、共感は感情移入を促すための「接着剤」の機能を果たしています。

 だからこそ、読者を共感させ、感情移入させられる魅力的な作品を生み出すことが求められるのだと思います。

 カクヨム甲子園も、また然り。

 ただ、共感をみていく感想は、思った以上に大変です。下読みが行う、一次選考をしていくようなもの。違いがあるとすれば、私は感想を書いているのであって、ドラスティックに選考をしているわけではないというところかしらん。

 どんな作品にもいいところはありますから。


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