第二話

「溝垣、お前反省してるか?」


「誠にすみませんでした」


目の前で土下座させている連続告白魔に言う。

あの後引っ張りながら教室に引きずり込んだ。

周囲の目が突き刺さるがいつものことかつ

その目が射抜くのは俺じゃなく溝垣の方である

巻き込まれるこっちの身にもなってほしい


「昼飯、奢れよな」


「ゲッ……まじかぁ……嫌だ……」


「少しは隠せよ。流石に傷つく」


「言っちゃあ悪いがお前の自己満足だろ?止めなきゃ良いじゃん」


「OK分かった。もし痴漢冤罪食らっても俺は見捨てるからな」


「私が悪かったので許してください」


そんな会話をしながら教授が来るのを待つ。

俺等が今から受けるのは物理のやつ。

大学となっていきなり研究とか好きなことをやれる訳では無いと思い知らされた。

場所によっては最初から出来る所があるらしが俺の学力では無理そうだし何より遠かった。

Discoverという直訳したら発見となる外来のsnsを隠れて見ながら話を聞き流す。数年前に少し触ったっきり触れていなかったが溝垣に誘われて再開したらかなり面白い。顔も声も知らない相手だと言うのに。画面に表示される会話。


今授業中だけどつまらん


わかる


こんなの何の役に立つんだよ


一般教養って奴だろ


名前も知らない誰かの会話、

口を出しても良いが今日は見るだけにしておこう

そんな事を考えると会話が弾む


受験やだ……


結婚に逃げるという手もあるよ


その言葉を最後に鯖は沈黙した。

弾んだが破裂したらしい。

これ以上待っても会話は始まりそうにない。

仕方ないから雑音と化した講義に耳を傾ける



「それじゃ次回。今日は浅井、黒板消しとけよー」


そんな声が聞こえる。

後一年もこれを続けるというのかと考えると眠気が湧き出す。それに身を任せようとして

ヴーという携帯の振動音がひびく

着信元は不明。

出ようかと迷ったがDiscover経由であることに気付き辞めた。再開してから数ヶ月。

こんな感じの出来事が何度かある。

鯖で聞いた所スパムの可能性が高いと言われ、

そこから出るのを辞めた。


「ふぁぁぁぁ良く寝たぁ…」


告白祭りが目を覚ました、

こいつは俺が比較的真面目に起きてたのにぐっすりと夢の世界にいたようだ。


「突然だが流太、夢の中の彼女って付き合うにカウントされるのだろうか」


「ついに夢の中ですら告白したか。俺はお前の心が心配だよ」


「失敬な」


流石に言い過ぎた様だ


「夢の中ならなんでも許されるからな」


「本当に大丈夫か?」


いつか精神科に無理矢理連れて行こう。

俺は決心した。


「で?その妄想の中でお前はcまで行ったのか?」


「おいお前そーゆーキャラだっけ……?

てか俺はそんな軽い奴じゃねぇよ。告白したところで退園食らった」


夢すら拒絶するこいつを誰か拾ってやってくれ……


「昼飯、どーする?」


「あーそうだな。どうせ今日はもう無いしバイト先でなんか食うか」


「まかない料金にしてくれるのか……ありがてぇ」


言わなきゃよかったと思いつつ大学を出て数キロ先のバイト先である牛丼屋に向かう。


「店長ーいつものやつ流太込みのまかない料金で2つー」


「了解」


「いやそこは俺のセリフだろ……」


さも当然のように注文する溝垣。

まぁこいつは週3で来る常連だから空気は軽い。


「そういや鯖にも居たよな。牛丼屋でバイトしてるって奴。誰だっけ」


「知らない。お前がいる別鯖じゃねぇのか?」


「あーそうかもしれん。悪い」


「いつかは誘ってくれよ」


「そうだな何時かは呼ぶよ」


農袋として渡ってきた鯖は二桁の溝垣は俺が知らない人と交流している。遥か昔のソシャゲ鯖と現在は機能停止した鯖の2つしか入っていない俺には知らない世界だ。



(お前が誘ったから入った鯖なんだけどな。)

そんな事を考えながら俺は流太を右目でチラ見しながら牛丼(つゆだく並盛)を口に入れる。

件の牛丼屋バイターは流太もいる鯖のメンバー。

(…あいつが居ない時の会話だから仕方ないか…)

俺含めかつての同級生は流太郎を知らない。

同級生同士も知らない。まぁ数年も自宅から授業受けてたしな。気は合うし良く話もするが流太は自分について話さない。

まるで知らないかの様に。

(局長も局長だ…消さなくてもよかっただろうに。)

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