【会話劇】「今日は〇〇の日」で漫才します!【毎日更新・全23回】

石矢天

「シラントロ」(8月9日)


「はい、どうもー。シンタマカブリでーす」

「よろしくお願いしまーす。拍手ありがとうございまーす。つかさあ、シンタマカブリってなんだよ」

「俺らのコンビ名だよ、バカ。あ、コンビ名だけでも覚えて帰って貰えると嬉しいでーす」


「そうじゃなくて。なんでこんなマイマイカブリみたいなコンビ名なのかって聞いてんのよ」

「待って待って待って。怖い怖い怖い。このコンビ名いっしょに決めたよな? ちょっと高級な焼肉屋で『この肉は美味いなあ、よし、これコンビ名にしよ』って、二人でいっしょに決めたじゃん? あ、そうなんですー。シンタマカブリって牛肉の部位なんですよー。コンビ名だけでも覚えて帰って貰えると嬉しいでーす」


「そのコンビ名、牛肉を嫌いな人が聞いたらどう思うでしょうか?」

「知らん、知らん。そんなん気にしてたら、コンビ名なんか付けられんって」


「でもなあ、僕だって大嫌いなシラントロがコンビ名の芸人とか、顔も見たくないからなあ」

「なんでだよ。顔くらい見てやれよ。つかネタ見てやれよ。コンビ名を聞きたくない、とかならギリわかるけど……えっ、てかシラントロってなに?」


「え? シラントロ知らんの?」

「知らん、知らん。シラントロ知らん」


「うっそ。結構前から流行ってんだぞ。最悪なことに」

「そりゃ大嫌いな人間からしたら最悪だろうな。シラントロ知らんけど。え? ホントに聞いたことなんだけど。マジで流行ってんの?」


「流行ってるって。この前も隣の席で女の人が『美味しい、美味しい』って生でモリモリ食べて、それ見た僕はおえーって」

「吐くな、吐くな。失礼だろうが。生で食べるのか、シラントロ。なんだろ、外国の野菜とか果物?」


「そこから? 野菜だよ野菜。……あ、でもなんか日本では別の呼び方もあるから、そっちなら聞いたことあるかも」

「あー、そういうことね。同じものだけど別の名前、ってやつだ。そっちはワンチャン知ってるかも。教えて、教えて。」


「カメムシソウ」

「ごめん、ぜんぜん知らんかった」


「マジかよ。お前、なんにも知らねえじゃん。どうなってんだよ」

「お前、そんな『みんな知ってるぞ』みたいな言い方してるけど、お客さんもポカーンとしてるからな」


「おい、なんて顔してやがんだ。ビンタすんぞ」

「やめろ、やめろ。お客さんにビンタとか絶対ダメだから」


「ちっ、令和で命拾いしたな」

「平成でもダメなんだよ、バカ」


「待って。マジでみんなカメムシソウ知らねえの?」

「いや、知らんよ。どんな野菜なん?」


「だから、カメムシみたいなニオイがする野菜だよ」

「最悪じゃねえか。そんなもんが流行るわけねえだろ」


「好きな人はそれがたまんないんだってさ」

「ないないないない。そんなもんが好きなヤツがいてたまるか」


「おいおい。そんなこと言っていいのか? カメムシソウを好きな人を全員敵に回すことになるぞ」

「カメムシみたいなニオイがする野菜を好きな人と友達になれる気がしないんだわ」


「あっ!」

「どうした?」


「思い出した」

「なにを?」


「シラントロのほかの呼び方」

「だからカメムシソウだろ?」


「もう一個思い出した」

「あっ、まだあったんだ。なになに?」


「コリアンダー」

「それは聞いたことある。なんかすっごい嫌な予感してきた。それさ、ほかにも呼び方があるんじゃない?」


「パクチー」

「すみませんでしたあああああ!!! 友達になれる気がしないとか言って、本当に申し訳ございませんでしたあああああああ!!! 全然友達なれます。っていうか、親友になれます。俺はパクチー大好きですし、あの匂いがたまらないんですよねえええええ!! わかるなあ。気持ちわかるなあ」


「ねえねえ。あと僕さ、ショウズクも苦手なんだけど」

「もう勘弁してくれ」




      【了】




🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤🎤


はい。ということで、始まりました。

ただ思いついた漫才の台本を載せるだけのコーナー。


8月9日は「パクチーの日」ということで、パクチーをテーマにしてみました。

ここから残り22本。がんばりまーす。

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