第22話 残り2日。好きな人

 待て待てまてまて。ちょっと待て。


「俺が凛那を……? なんで??」

「だって、ケイちゃん……つばさちゃんとデートしてたし、海に行く前の日もふたりくっついてたし、それに海でも、つばさちゃんにパーカー貸してた……」

「いやいやいやいや! 待て。まずひとつずつ聞いていこう」


 なにをどうしてそう思うのか、ひとつずつ解いていこう。

 うん。そうだな。


「デートってなんのことだ?」

「……前にショッピングモールで、ふたりで仲良さそうにご飯食べてたの見かけたよ?」


 ショッピングモール……?

 はて、と考えてる。そして、ああ! と思い出した。


「あれは、たまたまあそこで会ったんだよ。っていうか、みのり、いたのなら声をかけてくれれば良かったのに」

「じゃ、じゃあ、海に行く前の日に、つばさちゃんがケイちゃんの家にいたのは?」

「アイツが猫を見せに来ただけ」

「海でパーカーを貸してたのは……」

「アイツ、水着が取れたのに、また海に入るって言うから貸しただけだが……」

「水着が取れっ……!? ケイちゃん、見たのっ!?」

「みっ! 見てねぇよ!」


 ジトッとした目で見つめられる。


「ケイちゃんは、つばさちゃんが好きじゃないの……? じゃあ、どうして小説に出したの??」

「それは小説のヒロインに、ライバルが必要だったから……」


 おかしいな。ちゃんと答えてるのに、なぜかみのりから『疑わしい』ってオーラが消えない。俺は、ふぅと息を吐いた。


(……本当は、明日コイツに見せるつもりだったんだけどな)


 俺はポケットからスマホを取り出す。

 自分の投稿している小説のページのリンクをコピーして、みのり宛のメッセージとして送った。

 みのりのほうから、ピロンと通知音が聞こえる。


「……ケイちゃん?」

「いま、俺の書いてる小説サイトのリンクを送った。それ読んでもらえれば、みのりのキャラクターが負けヒロインじゃないって、分かってくれると思う。一話あたりの文字数は少ないし、多分全部読むのにもそんなに時間かからないんじゃないかな」


 真剣な顔をした俺を見て、みのりがたじろぐ。

 俺はすくっと立ち上がった。食べ終わった器とお箸をキッチンへ運ぶ。


「じゃあ、みのり。俺ちょっと家に戻るわ。更新分の話を急いで書いてくる」

「う、うん」

「全部読み終わったらさ、連絡もらえるかな?」

「わ、わかった」


 俺はそう言うと、幼馴染の家をあとにした。

 急いで部屋に戻って、パソコンと向き合う。

 カタカタ、カタカタと音を立て、みのりに宛てた想いを書くのだった。

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