第54話―今日の敵はいつかの友
「―さて、オレもやるかあ。オレの相手は誰かなあ………っと」
「皆手が空いてないようだからな。私が相手になってやろう。『
レイティアは邂逅一番、
それを両腕を下で交差させて受け、距離を取る悪魔。
「おっと、こりゃ面白え。〝紫の末裔〟さんじゃねえか。オレは〝
そう言って自らを〝
「こりゃ私もしなきゃか。ご存知の通り、〝紫の末裔〟レイティアだ。よろしくする気は無いな。この戦いが最初で最後だから、よッ！」
言いながら、その黒紫に染まったままの右手を再度突き出す。
「まあまあ、そう言わずによ。魔法使い同士、仲良くしようぜ？―〚
アスモデウスが唱えると、その手に赤く輝く本が現れる。その本が開いたかと思うと、奴の前に炎の壁が出現する。系統属性魔法【火】、中等魔法、〚
レイティアの突き出した手刀はその火の壁に阻まれる。が、レイティアはニヤリと嗤い、
「〚
右手を焼かんとする炎の壁を巻き込み、その手に地獄の炎の魔法を重ねがけする。
獄炎を纏った黒紫の手刀をアスモデウスに突き出すと、奴は受けられず、その土手っ腹に突き刺さる。
「かはッ…………。くははッ、面白いじゃねえか………！〚
今度は蒼く光る本が握られる。本が開くと、奴の周りに幾つもの水弾が現れる。その数、数百。
「―行けッ！！」
系統属性魔法【水】、最高等魔法、〚
生み出した数百の激流の水弾が、レイティアを穿たんと襲いかかる。
バックステップで距離を取り、そのまま走りながら避ける。が、さすがにキリが無いと思ったのか、レイティアも魔法を行使する。
「〚
系統属性魔法【風】、その最高等魔法。雷の荒れ狂う黒き嵐が、まだ百以上は残っていた水弾を相殺し、その嵐も消える。
「ははっ………、くははッ、くはははははッ！！楽しいな！心が躍る！〚
アスモデウスは高揚しながら、翡翠に輝く本を手に取り、系統外属性魔法【光】を行使する。それによって、奴の土手っ腹に空いた傷が癒える。
「ああ……！楽しいな……！こんな気分の高揚する戦いは久しぶりだ！！さあ、もっと楽しもう！！！」
「くははッ、お前もオレと同じか！いいぞ！！―出てこい、オレの
奴が言い放つと、その周りを数百もの
「さあ！どうする！この数のオレの僕を相手にできるか！？」
「ふむ……。さすがに一対多数は分が悪いな。ここは、私の腕の見せどころ、か？」
レイティアはそう言うと、ゆっくりと、それでも着実に迫ってくる
「朽ち果て
レイティアは自身の得意魔法、古代系統外属性魔法【紫】、その頂たる魔法を行使する。
レイティアの放ったその魔法は、全ての
その靄は徐々に死霊を蝕み、やがてその全てを消し去った。
「―初めて使ったが、中々面白い魔法だな。これは改良のしがいがありそうだ……！」
「なん、だ………、その魔法は………！？」
驚愕に顔を染めるアスモデウスを置き去りにして、レイティアは先刻使った魔法に目を輝かせている。
やがて満足したのか、アスモデウスに向き直ると、先ほどの魔法の説明を始める。
「魔法を極めたその先にある頂、それが“極位”。私はこの【紫魔法】しか使えないが、私の弟は他にも扱うぞ？あまり見たことはないがな。見た感じ、お前のその〚
それを聞いて、愕然とするアスモデウス。
そして、苦笑しながら奴は言う。
「………極めたと思った
アスモデウスが魔法の詠唱を始めると、眼の前に黄金色に輝く本と魔法陣が出現する。
彼のその潔い言葉に、レイティアはニカッと屈託の無い笑みを浮かべ、話す。
「そうだな！私はお前のそういう潔い所、気に入ったぞ！次会った時は、一緒に極めよう、この
レイティアが黒紫に染まった手刀を、アスモデウスの腹に突き刺す。
その瞬間、奴は最期の魔法を行使する。
「かっ………………、は………………。……………〚
そうして、魔導を極めんとした悪魔は、光の粒子となって消えていった。
「………お前との戦い、楽しかったぞ。……またな」
しばらくはそのまま、光の粒子となって消えた
そして―
「………あとは、お前だけだ―アリオスッ！！」
ヴァイと対峙しているアリオスは、その言葉が聞こえたかのように、ニヤリと嗤った。
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