第52話―天地斬り裂くは黒白の刃
「―妾の相手は貴様か?〝
カレンは自分の愛剣たる聖魔剣を正眼に構えながら言い放つ。
「俺が解るとは。面白い、その知識、寄越せ」
そう言って〝
すると、魔力回路のようなものが繋がれ、そこから何かが吸収されていく。
「―ッ!“
瞬間、カレンは黒白の聖魔剣を逆手に持ち、魔力回路を断ち切る。
「お主………妾のモノを奪うか」
「是。俺は常に欲している。知識を。技を。記憶を。―魂を」
その言葉の瞬間、奴の眼がギラリと狂気的な光を帯びる。身の毛がよだつようなその眼光に、カレンは一瞬硬直してしまう。
その硬直が、命取りとなる。
「故に―寄越せ、貴様の全てを!」
言い終わると同時に、奴は過去に奪ったであろう魔法を行使する。その魔法は―
「くっ……!?動け、ない……!?」
「―〚
「なぜ…………貴様、が」
眼を見開いて問うカレン。その眼には驚愕と困惑、そして怒りが入り混じっている。
その問いに淡々と答えるマモン。
「向こうの二人然り、
最後まで言い終わる間もなく、マモンの口が斬られた。
ドクドクと流れ出る血。
その表情はただただ困惑しているのみだった。
「グッ………。な、ぜ……うご、け……」
「それ以上喚くな、下郎」
カレンの全力の魔力放出。それを目の前で喰らっているマモンの額からは汗が滴り落ちる。
奴は動かない。否、動けないのだ。魔王のその覇気に怖気づき、口を深く斬られた痛みすら忘れ、硬直したまま動けなくなっていた。
「………これ、は」
「斬ったというのに、よく回る口だ」
「ブァッ!?」
冷酷な眼で見ながら、硬直している奴の口を
「よくもまあいけしゃあしゃあと抜かしおるわ。妾の配下の魔法を利用されているだけでも吐き気が止まらんというのに、殺したときに奪わせてもらった、だと?どこまで我が配下を侮辱すれば気が済むのだ?」
「ッ………」
「我が配下を殺めた事、万死に値する。償いなど許さぬ。妾の逆鱗に触れた事、せいぜい後悔しながら、逝け。双極剣、極致【
カレンは左手に握る黒白の聖魔剣を天に掲げる。すると、剣身だけでなく、剣全体が瞬時に巨大化する。天地を割らんばかりに巨大化したその聖魔剣を、目の前で硬直している悪魔めがけて振り下ろす。
「まっ……」
「―“
ズガアアァァーーン!!!という轟音とともに、巨大と言う言葉では形容できないほどに大きな黒白剣が大地ごと斬り裂く。
瓦礫や砂埃が舞う。やがて収まると、そこにはただ剣によってできた巨大な裂け目が残るばかりで、悪魔の姿は跡形も無くなっていた。
だが―
「『
「―はっ!?はあ………はぁ………」
「一撃で終わらせるわけが無かろう?」
「ッ!?!?」
そう言って、たった今振り下ろしたその巨大な剣をもう一度振りかぶり、眼の前で瞳孔が開ききっている悪魔に向けて下ろす。
跡形もなく消えれば、また蘇生する。また斬る。
5回も同じことをやれば、もはや奴の眼に生気は無くなっていた。
「………った…………」
「何?」
「す………、すまな、かった…………」
それを聞いて呆れるカレン。
「何じゃ、もう終わりかの?他愛もない、アレだけ大言壮語叩いておいて、こんなものか」
カレンの口から紡がれる一つ一つの言葉にビクビクする悪魔。
「…………はぁ。もう用済みじゃ。せめて最期は、妾の抱擁で以て死を与えてやろうぞ」
「っ……………」
もはや何を言う気力も無いマモン。
「では―死ね。『
悪魔を包み込むように大きな火柱が立つ。その火柱は文字通り抱擁するように収束していき、その火柱が消えたあとには、残るものは何もなかった。
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