第6話―赫怒と覚悟

同時刻。場所は変わり王城。

玉座の間にて、現国王、カレン・リュ・ロゼルナは足を組み、片腕で頬杖をついていた。


「……さて。どうしたものやら……」


その途端、玉座の間の扉の前から、隠す気も無い膨大な荒れ狂う魔力を感じた。


「……きたか。入るが良―」


い、とカレンが言い切るまもなくレイティアが入ってきた。


「陛下!一体これはどういうことだ!!」


ヴァイとジャックも遅れて入ってくる。


「姉上!ここは神聖なる玉座の間です!気持ちは私も解りますが、そのような無礼な……」

「ヴァイよ、良いのだ。レイティア、それは妾も聞きたいところよ。何故こうなったか……。人間ともう一度手を取り合えるよう、精一杯頑張ってきたのだがな」


さらにレイティアの魔力が強まる。玉座の間の窓がガタガタと軋む。


「っ……!だから、これだから人間は信用ならんのだ!先代陛下の出来事を忘れたか!」


レイティアの右眼が鮮やかな紫色に光る。その眼に薄く魔法陣が浮かぶ。


(まずいわ……!自身の魔力の高まりから発現しつつあるのね……。でも、ここで“それ”を発

現されるわけには……!)


「忘れてなどいない。忘れるはずが無いだろう。そなたら魔女の末裔には誠に申し訳ないと思っている。此度も、妾の人間ともう一度手を取りたいという我儘に付き合ってくれたことにも感謝しておるし、同時に面目ないとも思っておる。王家の血を引く者として改めて謝罪しよう。すまなかった」


そういってカレンは頭を下げる。


「クッ……」


レイティアの眼が揺れる。同時に、右眼に薄く浮かんでいた魔法陣が消える。


「陛下!頭をお上げください!陛下は何も悪くなどないのです!王たる貴女様が、そのように易々と頭をお下げにならないでください!」


ヴァイがそれを宥める。


「ヴァイもすまない。妾の力不足ゆえに、さらに苦しい思いをさせてしまって」

「私のことなどどうでもいいのです。陛下からそのようなお言葉をいただけただけでも、恐悦至極に存じますれば。私よりも、姉上や、同じ魔女の末裔たるサーリャ様が気の毒なのです」

「……そうだな。お前は昔からそういう者だったか」


カレンは一瞬思考に耽り、すぐに顔を上げた。


「……妾はもう一度、人間と手を取りたい。この気持ちは変わらぬ。だが……あちらがそれを拒むならば、妾の国に害をもたらすならば、妾とて容赦はせぬ。流石に此度の件、見過ごすわけには行くまいよ。奴らに目にものを見せてくれようぞ」


そういったカレンの目には、魔王としての、或いは、国王としての決意が見て取れた。


「「「全ては陛下の御心のままに」」」

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