止まらぬ刹那、世界は揺らぐ

ミリリ

序章

ただ1つ、

たった1つ、

俺は才能(ギフト)を得た。

時を止める、剣一振で都市を壊滅させる、空間を破壊する、そんな能力が数多ある中、俺が得たのは、「加速(アクセラレーション)」だ。誰もが弱いと思うだろう。何度馬鹿にされたか。だが、この欲望と欲望が錯綜し続ける、力にまみれた世界に終止符を打つための能力としては俺は十分だと思う。


「・・・ 」

今日も太陽は黒く輝いている。

「来い、っ言ってんだろ、女」

「たす・・・」


「また、あいつか。」

「昔は勤勉な方だったのになぁ。」

「力に溺れてからは酷いもんだ。」

思わず拳に力が入る。

「その手を離せ。」

「貴様、私が誰だか知らんのか!」

「あぁ、知らない」

「ッフ、なら覚えておけ。私は、」

「必要ない。」

「俺が興味があるのは貴様の支配地だ。」

手にエネルギーが集まり始める。

「そうか。ならば、○ね!」

能力ギフト破壊デストラクション

「ありゃ、旅人かね。」

「運がなかったわね。」

能力は織り込み済みだ。

発動までの時間は10秒。

波動に当たれば、傷は癒えなくなる。

たが、こっちのラグは3秒だから、問題はない。

「能力《ギフト》加速アクセラレーション

その鼓動は加速し、出力速度はする。

「はぁ、はぁ」

なぜだ、能力が使えないではないか。

「何をした!」

「知る必要はない。」

「それよりも、村人達に言い残したことはないのか。」

「無い。私はこの村をしっかり今まで守ってきたのだから、感謝しろ。」

「それは昔の話だろ。」

「ック、仕方なかったんだ。」

「守るために力を欲すれば欲するほど、それと引き換えに心が廃れていくんだ。」

何を言っているのか、よく分からない。

いずれにせよ、コイツの仕打ちは許せない。

「せいぜい、自分の弱さを呪って○ね。」


・・・バタ


「ありがとうございます。なんとお礼をしたら」

「その必要はない。部下を助けるのは当然だ」

「それはどういう?」

「よく聞け、村人達よ。この村は今からこの俺」

「ブリーク・テルハの支配地となった。そして、それと同時に革命が幕を開ける。」

「力に屈することのない、平和な地をつくる、それがこの俺が目指す世界だ」

拍手と歓声が沸き上がる。だがそれとは裏腹に疑念を抱いた顔が視界をちらつく。

「私は村長のメルフです。私の家で詳しい話をしませんか?」

「ぜひ、そうさせて頂きます」

まだ拳は緩めれない。

家に着いたと思うと、目の前を白猫と黒猫が横切った。あの時、おの男の様子はどうも環境や性格のせいだけでないように思えた。どことなく感じるあの違和感。

今思えば、俺はその正体はこのときから、何となく分かっていたのかもしれない。こんなことを考えても手遅れなのだが。

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