第4話
「すみません!昨日報告するの忘れちゃって…。昨日の依頼、なんとか終わりました」
私は冒険者としての初仕事を終えた翌日、再び冒険者協会を訪れた。依頼をこなし、猫の捜索を成功させたことを受付嬢のアリゼに報告し、報酬を受け取る。アリゼは穏やかに笑みを浮かべながら、私の仕事ぶりを称賛した。
「さすがですね、ルナさん。初めての依頼とは思えないほど手際が良かったですね」
「ありがとうございます!」
「しかしまた今日入ってきたものも雑用ばかりであまりルナさんのお気に召さないかもしれません」
私は頬を赤らめていたがアリゼさんの一言で照れは消えてしまった。昨日と相変わらず出ている依頼は小さな依頼ばかりのようだ。そういえばと昨日出会ったリーゼのことを思い出し、話題を切り替えた。
「そういえば、昨日買い物をしているときに、星教会の修道士様に会ったんです!リーゼっていう名前の、とても優しい方で」
アリゼは少し驚いたように目を見開いた。
「リーゼ様、ですか。すみません、私最近入ってきた修道士様の名前は知らないんですよね」
「彼女、市場での買い物を任されていて。普通の女の子みたいでした。優しくて癒される感じで、すごく素敵な人なんです」
その言葉に私は頷きつつとリーゼのことを熱心に語った。アリゼは優しく微笑みながら、私の話を聞いていたがふと表情を曇らせた。
「ルナさん、実は…ルティナの街は平和で、ほとんどの人が冒険者の重要性を忘れがちなんです。昼間から酒を飲んでいる冒険者も少なくありません」
「そうなんですか?」
「平和なことは良いことなんですけれどね。そろそろ厄介な人が来る予感がします」
ルナはその事実に驚きつつも、どこか納得した様子を見せた。昨日のリーゼをナンパしてたあの人たちとか。そういえばあの後置き去りにしてたけどどうなったんだろう?ちゃんと憲兵に見つけてもらったのかな?平和なこの街の穏やかさを感じていたが、それが必ずしも良いことばかりではないのだと気付かされた。そんな時、突然、冒険者協会の大きな扉が勢いよく開かれた。私は驚いて振り返ると、そこには屈強な男が立っていた。背が高く、筋骨隆々のその男は、肩に大剣を担いでおり、荒々しい雰囲気を纏っていた。その頭に髪はなく、太陽光が反射しそうな程綺麗なハゲだった。お母さん、ハゲだよハゲ!私初めて見た!いやいや、そういうことじゃなくて。
「やっぱり来ましたか。ルナさん、彼はボマーと言ってAランクの冒険者です。彼は強いんですけれど少々素行が悪くて。ルナさん、気をつけてくださいね」
「ふうん」
アリゼが小声で説明してくれた。ボマーは、別の受付嬢に依頼の完了を報告し、報酬を受け取ると、目に留まった私にじっと視線を向けた。彼の鋭い目は、私を見定めるかのように細められていた。そして、彼はニヤリと笑いながら、ゆっくりとルナに近づいてきた。
「おい、ちびっ子」
彼は私の前で立ち止まり、見下すようにして言った。
「田舎臭いガキが何をしているんだ?家に帰ってママの母乳でも吸ってる方がお似合いなんじゃないか?がはははっ」
その言葉に怒りが沸き上がり、目を真っ直ぐに見開いてボマーを見据える。このハゲ!と言ってやりたいところだけどまだその時じゃない。御伽話の中で出てきたシーンでもう少しスマートなやり方があったはずだ。
「そういう貴方こそ、ママの元に帰ってオギャバブしてた方が良いんじゃないですか?暇を持て余すのが冒険者の責務なんですね」
「おお、随分と威勢がいいじゃないか」
「なら、喧嘩でもしてみます?」
ボマーは面白がるように笑い、挑発をしてくる。私はその喧嘩を買い、怒りに満ちた目で彼に答えた。
「おうおういいじゃねえか。コテンパンにしてやるよ、覚悟しておけよ!」
「それは私のセリフです。家を出てから本気の戦いが出来ずに腐ってましたから」
「はあ、どうしてこうなっちゃったんだろう」
アリゼさんはため息を吐きながら檸檬水の入ったジョッキに口をつけるのだった。
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