餌食の本懐
夏人
本作のあらすじ(ネタバレ含みます)「第45回横溝正史ミステリ&ホラー大賞」用
社畜OL神城あずさはどん底の毎日を送っていた。
生活苦、借金、パワハラ、社内いじめ・・・・・・。彼女は遂に心を病み、会社に行くことができなくなった。そしてそしてそのタイミングで知る、高校時代の先輩の失踪。「死ぬんだったら自然の中がいい」先輩のそんな言葉を思い出し、あずさも森へと誘われる。そこは生い茂る森と、霊山がそびえ立つ陸の孤島だった。
しかし、そこで彼女を待ち受けていたのは、人を人とも思わず、人間狩りを行う殺人鬼集団だった。
わけもわからないうちに散弾銃で肩を撃たれ、気絶したあずさはまるで動物のように山小屋に運ばれる。そこで行われる彼らの恐ろしい会話。あずさは血まみれになりながらも小屋を脱出。だがすぐにクロスボウや散弾銃で追い回される。
彼らの頭部にはビデオカメラがつけられ、逃げ惑う姿を撮影される。森の中にも監視カメラが大量に設置されていて、どこに逃げても奴らは追ってくる。
自分は死にたいのだろうか。生きたいのだろうか。そんなこともわからずにあずさはただ森を駆け抜ける。
森の奥に隠れ、寒さと痛みに震えるあずさの脳裏に浮かぶのは苦い記憶の数々だった。
幼少期、祖母とともに村八分にされながら過ごした田舎の日々。
高校時代、部活でいじめられながらも必死に努力したにも関わらず、自分のせいで全てを台無しにしたあの事件。
そして社会人になって、唯一の心の支えだった人に裏切られた絶望。
改めて思い出しても散々な記憶ばかり。どうせ生きていてもいいことなんかない。もう死んでもいいではないか。
そう全てをあきらめかけたとき、彼女は先輩と再会する。
あずさは気づく。私は自分の人生を逃げてばっかりだったと。
現状が悪化するのを恐れるばかりで。自分の不幸を嘆くばかりで。ずっと耐え続けてきた。義理の家族に何をされても。会社で虐げられ、搾取されても。軽んじられ、見下され、蔑ろにされても。ずっと耐えることしかしなかった。それはある意味、逃げていたのではないか。すべき戦いから、逃げ続けていたのではないか。
私は、私を痛めつけ、傷つけ、貶め、害するものの全てと。その全てと。
私は、自らの全存在をかけて、戦うべきだったのだ。
その結果、何が待っているとしても。
あずさは武器をとる。生きるために。ただ生き残るために。私は戦うんだ。
クロスボウ、散弾銃、ライフル、拳銃、数々の武器で身を固めた男たちとの戦いは熾烈を極める。
「なんだこの女。いったい何者なんだ」
殺人鬼たちは気づく。自分たちが見下し、侮っていた存在が、とんでもない相手だったということに。だが、もう遅い。確実に一人、また一人とあずさに敗北していく。これはもう狩りではない。自分が死ぬか。相手が死ぬか。いや、むしろ、
「狩られているのは俺たちの方か」
あずさは戦う。
このどうしようもない毎日にもきっと意味があったはずだから。その日々で培ってきた全ての技術と知識を使って。
これはくそみたいな私の人生の全てをかけた戦いだ。
深い森、そびえ立つ霊山を舞台に、6人の殺人鬼を相手にあずさの孤独な戦いが始まる。
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