第二十六死 お金を稼ごう①
「これで怪我でもしてたらどうするつもりだったのですか!!」
「で、ですが…!」
「ですが…?一歩間違えば大怪我だったかもしれないんですよ!」
調理室と書かれた部屋の中から左神原くんと思われる人の声が聞こえてくる。
声を張り上げ、怒っているようだった。相手は恐らくハクナさん、一体何がどうなっているのか…
とまあ僕たちが困惑の表情を浮かべていると、
「ほっほっほ、どうやらまたやっているようですね。」
「また…?」
「お入りになられれば分かりますよ。」
それだけいうと、じじさんはドアノブに手をかけ扉を開ける。
「…ッ?!ゴホッゴホッ…なんか…ゴホッ…煙たい。」
「ぶぁっくしょんッ!!あっなんか目に入ったぁ!?」
うわ…すごい煙、前がよく見えないな。
僕たちが中に入ると煙で視界は悪く、周りがよく見れない状況になっていた。
「―――!!――!」
そんな中でも、奥の方からは変わらず大きな声が聞こえてくる。
「これ…ゴホッ…前が見えない…」
そんな状況に僕たちが困っていると…
「ふむ…失礼…」
先ほどから後ろで見守っていたじじさんが、一言話すと僕たちの前に出て、煙の中へと入って行く。
それから数秒後、部屋の中に蔓延していた煙はみるみるうちに消えていき、視界も晴れてきた。
どうやらじじさんが窓を開けてくれたらしく、煙が外へと出ていっている。
だけど…
「一体ここで何が…」
煙が晴れてくると同時に部屋の様子も伺えるのたが、部屋の様子ははっきり言ってとても酷いものだった。
部屋のあちこちの壁が黒ずみ、謎の物体がいたる所に飛び散っている。
まるで何かが爆発したみたいだけど…
「お二人共…この量の煙を放置して部屋の中で何をしていらっしゃるのですか。」
「じ、じじさん…?いつの間に…」
じじさんが声をかけたことでようやく冷静になったのか、途端に顔を青ざめさせる。
「も、申し訳ありません!使用人の分際でハクナ様に出過ぎた真似を…」
「い、いえ!煌人の言ったことは間違っていません。私の方こそムキになってしまい…」
沈黙が辺りを包む。そんな気まずい空気に耐えられなくなってか、葛葉さんが声を上げた。
「あ、あの!結局、ここで何があったんですか?部屋の中が物凄い有様なんですけど…?」
「え、えっとそれは…」
話を聞くとどうやらハクナさんは、僕たちのために一人で夜中にクッキーを作っていたらしく、作っている最中にそれがうっかり爆発してしまったらしい。
「「「………」」」
「うぅ…お騒がせしてすみません…」
うん。なんていうかね、ツッコミどころが多すぎてね…
「いや…いやいやいや!!うっかり爆発ってどうやったらクッキーが爆発してこんなのになるんですかッ?!」
そう言って葛葉さんは床に張り付いた黒い粘着性を持った物体に指をさす。
「ぐぽおぉぉぉ…」
「なんか言葉発してるんですけど!!言語能力取得し始めてるんですけど!?」
葛葉さんが指さすその生物?…いや、物体は「ぐぽぉぉぉ…」と唸り声のようなものを上げる。
「いだぁッ!?え?ちょ、こいつ噛んできましたよ!?噛んできましたって!?」
「す、すみません…私実は、お料理が少々苦手で……」
「え?スルーですか?」
そう言って俯くハクナさん。だがよく見るとハクナさんの真っ白な肌は傍から見てもわかるくらいに朱くなっていた。
「いや、これ少々どころじゃ…ぴゃッ!?また噛まれたぁッ!?」
「夜遅くにお騒がせしてしまって申し訳ございません…」
「指がぁ…指がぁッ!?」
「いや、そんな…この屋敷に泊めさせてもらってるのは私たちなのに…」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁッ!?」
「ちょ〜と、葛葉さん静かにしようか?」
後ろで発狂している葛葉さんを尻目に、小栖立さんの言葉に僕も頷く。
「…ふふっ、」
「「…?」」
「いえ…こちらこそ……私と普通に話してくれてありがとうございます。」
「…?それってどういう―」
「――どうやら話はまとまったようですな。ここは私が片付けておきますので…皆様は部屋でゆっくりとお休みください。」
気づけば後ろにいたじじさんが箒を手に、部屋からの退出を促す。
「それなら私も…」
「ハクナ様は寝てください。」
ハクナのその言葉にじじは真顔で返答し、真たちを部屋の外へと退出させた。
「…やれやれ世話が焼ける。」
・・・・
「お世話になりました。」
翌朝、屋敷の主であるハクナさんにお礼を言い、僕たちは屋敷を後にした。
「ふぁ〜あ…それで?私たちはこれからどうしたらいいんですか?」
「そうですね…まずはお金を稼がないと、どうにも…」
「私たち今、無一文だもんね…」
その場で、でかいため息を吐く三人。
「それならいい場所を知ってるよ。」
いや、正確にはもう一人いたんだった…
「さっきから…なんで貴方が私達についてくるのかな〜?ねえ、左神原くん?」
「そんな目で見ないでくれ、僕は君たちの手助けをしに来たんだ。」
相変わらずのキラキラした雰囲気を纏いながらそんなことを言う左神原くん。
「手助け?そんなの必要ないから愛しのご主人様の下へ回れ右して帰ってくれないかな?」
「愛しって…確かにそうではあるけどハクナ様とはそういうんじゃ…」
「……?」
ものすごく気まずい雰囲気なんですけど…?
僕この場から離れていていいですかね。
というか葛葉さんは一体どこに行ったんだ!こういう時こそ葛葉さんの出番で…
「……」
「……ダラダラ」
「ちょ、ちょちょッちょいちょいちょいぃぃぃぃ!!」
葛葉さんの首根っこを摘みゆっくりと二人の方へ歩く。だが途中で葛葉さんから必死に止められたので一旦止まることにした。
「私…悪いことしてないのに…シクシク」
「明らかに僕のこと盾代わりにして隠れてましたよね。」
「ギクッ!」
止めた歩みを再び再開して―
「すいませんでしたぁぁぁぁぁぁッ!!」
・・・・
「それに、僕がここにいるのはハクナ様からの指示でもあるんだ。」
「指示…?」
小栖立さんが訝しげに左神原くんを見る。
「君たちを手助けしてほしいってね。」
「そんなのいら―」
「お金…この街で稼ぐ方法を教えるって言ったらどうする?」
左神原くんがやや食い気味に…だけど、どこか余裕の表情で言葉をかぶせる。
それには小栖立さんも動きを止める。
「……詳しく…」
「そうだね…教えてあげてもいいけど、教える代わりに僕も…暫く君たちに同行させてくれないだろうか。」
真剣な表情で左神原くんにまっすぐ見つめられる。それに対し、小栖立さんは…
「…ははっ…無理。」
とびきりの笑顔で返答するのだった。
◆
【左神原 煌人】
性別・男
『情報が開示されていません』
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