47. 『煙と蜜 第六集』/『大正學生愛妻家』1巻

 奇しくも同時期に、大正時代の身分差&年の差カップルを描いた2作品が揃いました。



◆『煙と蜜 第六集』長蔵ヒロコ


 まずは軍人さんと幼き令嬢の許嫁いいなずけカップルから。危うさと尊さが綯い交ぜになった密の味わいは本作ならではです。


 前巻からの因縁を晴らす柔道稽古。これほどまでに感情を露わにしたぶんさまの姿は初めてですね。完膚なきまでに理解わからせられるくろがねひめを泣かせた罪は重いのです……!



 いちゃいちゃパートは読者へのご褒美! ぶかぶかの柔道着を文治さまに着せてもらう姫子の愛らしいこと。むさくるしい漢パートとの温度差で整います。


 事件の再現は姫子の傷をえぐりかねないでは? と思いきや、まさかの姫×文誘い受け実現(語弊)でへきがねじ曲がるゥッ!! これもまたお勉強。大人の階段を駆け上がる姫子に文治さまも落とされつつあるような。



 陸軍VS海軍、柔道対決は試合前からバチバチです。本番でもブラコン炸裂で鉄を圧倒するしょう。このまま敗北を喫するかに思えた鉄でしたが、そこへ救いの女神が! 姫子のヒロイン力は文治さまの想定をも超えていました。


 兄が認めた相手を勝治も認めぬわけにはゆかず。決着も試合後も爽やかで温かな後味となりました。龍ねーねは姫子にとって一番の理解者の一人ですね。



 波止場での文治さまと姫子のやり取りは……この感動を言い表す言葉が見付かりません……! 立場や年の差を超えて二人の想いが通じ合った瞬間を、最高の形で目の当たりにできたことに感謝です。とりあえず身長差はとても良い!




◆『大正學生愛妻家』(1)粥川すず


 こちらは女中さんが士族の次男坊に玉の輿。疑似姉弟ぶりも併せて味わえる、お得な大正ラブコメです。


 主人公は亡父の借金を背負って働く女中・ふき。幼い頃に「ねえや」と慕ってくれたゆう坊っちゃんとの再会から、物語は始まります。



 とにかく、一話目でプロポーズのスピード感にしてやられます。勇吾のグイグイ来る感じと、昔のように冷静ではいられないふきの対比がたまりません。


 旦那様と奥様からの後押しもあり、何と二話目で挙式→新居→初夜……は未遂! 布団の配置で悩むふきが可愛すぎます。眠ってしまったふきを布団へ運ぶ勇吾も素敵。



 翌朝、台所で焼きおにぎりを頬張る二人の一コマが尊すぎる……! もう君たち結婚しちゃいなよ! してたわ!


 別の日は市場へ夫婦で買い出し。周りからは「若旦那と女中」にしか見てもらえないことに勇吾は不満。色男は憂いの表情も様になるねぇ~(誰目線?)。ともあれ、縁側でのイチャイチャは読者の健康に良い!



 夜の営みはまだの二人。ふきは勇吾の気持ちが気になって仕方がありません。

 その実、勇吾はふきの方からも迫ってほしい模様。悪友のももがいいキャラしてます。酔い潰れた勇吾をおぶって帰る姿も頼もしい。


 無事帰宅も、前後不覚の勇吾を介抱するドキドキ感をふきとともに味わいつつ……次巻へ続く、なのでした。



 今のところ幸せいっぱいの二人ですが、気がかりなのは序盤で養父の手紙に勇吾が書き加えた「結婚相手の身分は問わず」の一文。これが後に悪い方へ影響しないといいのですが……。



 それはそうと、切れ長でクールな坊っちゃん&童顔で愛嬌たっぷりなねえや、二人のビジュアルがとても良い! そこへ身分差・年齢差・身長差という関数が加わることで、尊みが何倍にも跳ね上がるのです!


 一冊読み終えるまでに何度キュン死したことか……。女性向け・男性向け、時代物はどうだとか、せせこましいことは言わず、全ラブコメ好きに手放しでおすすめしたい作品です。

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