8 親友だからこそ 上
そして俺の言葉を聞いた渚は驚いたような表情を浮かべて、そして少し間を空けてから言葉を紡ぐ。
「まあ私もそういう物だと思うよ。少なくとも私はね」
そして再び間を空けて小さく一呼吸置いてから俺の目を見て……そして反らして。
呟くように言う。
「……だから私だけでも、気分だけでもそのつもりだった」
「……」
多分、良い方に話しが転がったとしても、此処まで踏み込んだ事が聞けるとは俺自身思っていなかったのだと思う。
だってそこまで聞けたのならば、それはもう答えなんだ。
秋瀬渚が俺の事をどういう風に見ているのか。
どういう風に見てくれていたのか。
その答えなのだ。
そして渚は俺に聞いて来る。
頬を、赤く染めて。
「……明人はどうなの?」
「……」
「明人は……今日、私をどういう風に見てた?」
「どうって……」
「突然女だって言ってきた私を……どういう風に見てる?」
「……」
流石に、こういう事に疎い俺でも理解できる。
言葉の通り、渚はそういうつもりだった。
今日一日の距離感の近さは親友としての距離感のその先で。
俺が勘違いだと否定してきた事その物だった。
だとしたら……きっと、此処から先の返答で、俺達の関係性というのは良い意味で変わるのだろうと理解できる。
…………本当にそうだろうか。
いざこういう場に立った時に、そんな疑問が脳裏を過る。
別にそれは俺が勘違いしているだとか、そういう話じゃない。
この期に及んでそんな話を蒸し返すつもりはない。
果たして俺達の関係が良い形で変わるのかという、そういう話。
「……一回静かな所行こう。此処じゃうるせえし……少し、落ち着いた所で話したい」
言いながら、流石に自覚できた。
多分俺は、相当に面倒臭い性格をしているのだと。
「う、うん…………分かった。外にベンチ有ったよね。そこ行こう」
「……おう、そうだな」
言いながら二人でゲーセンの外に出る。
……俺自身が自覚できる程に、面倒くさい話をする為に。
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