3 やりたい事
「ああ、マコっちゃん校門前で待ってるってさ」
「え、なんで?」
「さあ」
渚の問いにそう返すと、橋本が色々と察してくれたように踵を返す。
「じゃあ私はそちらへ。では渚ちゃん、もし何かあったら連絡ください。相談位なら乗りますから」
「うん。ありがと、色々と」
「どういたしまして。それではお二人共、また明日」
そう言って橋本はこちらに気を使うようにこの場を後にする。
……こうしてみるとマコっちゃんと橋本はくっつくべくしてくっついたんだろうなと思う。
とにかく、そんな二人に気を使って貰ってこうして二人になったんだ。
きっとそうすべきだと思ってそうしてくれたんだ。
「大丈夫だったか? 渚」
色々と難しい事は極力考えずに、できるだけ肩の力を抜いて。
秋瀬渚の親友として、やれる事をやろう。
やってやりたい事を、やれるだけやってやろう。
「見ての通りだよ。滅茶苦茶大丈夫そうでしょ」
「そっか。まあ大丈夫だろうとなかろうと、愚痴の一つや二つ位はあるだろ。着いて行けはしかなったけど、その辺位は道中ゆっくり聞いてやるよ」
「道中?」
「買い出し行くんだろ? それとついでに少し遊びに」
「……ああ、そうだったね」
そう言って渚は一拍空けてから、小さく笑みを浮かべて言う。
「じゃ、
「だな。ならさっさと行こう。面倒とは言わねえけど、色々と巻き込まれちまう前にさ」
「そうだね。行こうか」
そして俺達もマコっちゃん達に遅れて教室を出る。
気の利いた事を言ってやれるかは分からない。
気の利いたことができるかも分からない。
それでも渚の16歳の誕生日を、そんな取り繕った笑顔で終わらせないために。
やれる事をやる。
まあもっともらしい事を考えはしてるけれど、実際の所は俺がそういう顔を見たくなかったりだとか、ただ単に渚と遊びたいだけだとか、そういう事なのかもしれないけれど。
……どっちもか。
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