NeaR〜身近な魔法の物語〜

@Yuzuru2022

プロローグ

「俺の本当の親でもないくせに!こんな時だけ親ヅラすんなよ!!」




「……っ!!」



 

 バシンッ!!!


 


 少年の視界が激しく揺れ、遅れて頬に張り裂けん程の痛みが走る。


 じわり、と口の中に鉄の味が広がる。口の中が裂けたらしい。それと同時に悔しさか、惨めさか……あるいは怒りと失望だったのかもしれない。


 ヘドロのような感情が少年を支配した。


 もう引き返せない。収まりを知らない感情が溢れ、少年の激情を後押しする。


「俺が行きたいって言えば……魔法学校に行けるんですよね?」


「サクくん……」


「やめろサク!!お前に魔法使いの道は進ませや……」


 焦ったように肩を掴もうとする男の手を荒々しく払い除けながら、少年は言い捨てた。



「あんたの思い通りになんかしてやるもんか!俺は魔法使いの学校に行く!魔法使いになってやる!!」



 少年の新たな人生は、ヘドロの様なドロドロの感情に支配されて始まる。


 だが、それは始まりに過ぎない。始まりは最悪だったかもしれない。けれどこれはまだプロローグ。


 これは何も知らない少年が世界を知り、無くした何かを取り戻すための物語。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る