山岳ガール
さやか
福島 安達太良山
その日は人生最後の日だった。
亡き父の影響で登山好きになった彼女は、初のある雪山登山にチャレンジするも山の中で立ち往生を余儀なくされた。
日本の吾妻連峰の雪山で一人の若い女性が立ち往生して身動きがとれずにいる彼女は環恵里沙。
神戸市内の高校に通う女子高生で休日はアルバイトで貯めた貯金で趣味の登山を楽しんでいた。
一時期山ガールとかいう単語が流行り、恵里沙もまた慣れない登山に一人で何度も山に行っては少々過剰になっている。
スマホも圏外で近くに誰もいない。
正直いって自分をなめていた。
「君、大丈夫か?」
そこに重装備の小太りの初老男性が現れる。
「足を挫いてしまって身動きがとれないのです」
大木優文は神戸市で喫茶店を営んでいる。
「一人かい?肩を貸そう」
大木は恵里沙を掴み、肩に腕を回す。
「あ、ありがとうござます」
「女一人で登るとは智恵子抄の安達太良山もトレーニングせんと登れんし、天皇さんも百名山登山諦めたみたいだからなぁ」
「私、山を登るのが好きなんです」
「今時珍しいのぅ」
二人は山を下山し、麓に降り立つ。
「ありがとうございました」
「いや、命があっただけでも良かったじゃないか?」
彼はそう言って去っていく。
恵里沙はその後ろ姿が眩しく映り、その帰りの電車の中。
恵里沙は嬉しそうに友人の由紀子とLINE電話していた。
「今日さ、イケメンのおじ様に出会えたよ!」
この気持ちは同級生でイケメンサッカー部に所属する憧れの佐久間先輩に片想いして以来だ。
山岳ガール さやか @syokomaka09
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