金髪美少女の義妹にマゾ性癖を押し付けるのは間違っている
牛頭三九
第1話 金髪美少女の義妹にマゾプレイを悟られてはいけない
蘭生学園
政界財界のトップが財を投げうってできた所謂金満な学校法人である。
生徒は一流の家庭に生まれたものしか入ることは許されない。政治家、一流企業の社長、宗教家、芸術家....様々な分野の卵が集まる学園では世界に通用しうる紳士淑女、ハイグレードエキスパートの教育を進めている。
(週刊耳打 子どもに行かせたい私立高校・公立高校〜最新版学校別⚪︎大△大進学者ランキング〜 より抜粋)
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2年Dクラス
授業が終わり、端から端まで書かれた黒板を女子学生がやる気なさそうに消していく。
この前の授業は世界史だったため、黒板にはユーラシア大陸がデカデカと描かれ国名がズラズラと書き込まれていて消すにも一苦労だ。
黒板消しは殻で出来た白い粉をすべて受け止め切ることはできず、スポンジを通り過ぎて下へボトボトと落ちていく。
「あー、もう最悪なんだけど」
チョークの粉が下へと落ち、赤白紺のチェック柄のスカートに付着したようだ。
手も真っ白になり、不機嫌な様子だ。
「おい、クズ。こっちこい」
黒板を消していた女子学生-岩田夜詩乃(いわたよしの)に俺燧伸琉(ひうちのぼる)は「クズ」と呼ばれている。
それは半年前、俺が同じクラスの谷川さんの体操服を俺が盗んだと無実の罪を課せられたことから始まる。
俺のバッグに谷川さんの体操服があるという物的証拠、放課後に掃除を岩田さんに押し付けられ最後まで残っていたのは俺だったという覆しようなない事実を突き立てられ俺は罪を被るしかなかった。
それならまだよいが、岩田さんはこのことを一つ下の妹に言いふらすと言い出した。
妹に兄が同級生の体操服を盗んだ変態だと知られるのは兄の沽券に関わる。俺は、
『何でもするから、妹...アリサにだけは言わないでくれ..!』
とお願いした。
すると、彼女は
『じゃあ、お前はこれから私の奴隷な。奴隷はご主人様の命令には絶対だからもし、いうことを聞かなかったり、反抗的な態度を取ったら妹さんに「お兄さんは女の子の体操服を盗む変態」って言い付けるから。覚悟しろよ、このクズ』
と土下座を強要され、頭をグリグリと踏まれ奴隷になることを宣言した。それから俺は岩田さん...いや、ご主人様である岩田様の奴隷となった。
俺が教壇へと歩み寄ると岩田様は
「スカートが汚れたから掃除しろ。あ、もし体に触れたらお仕置きな」
俺は「はい。わかりました」と岩田様の下に跪き、スカートの裾を軽く持ちスカートについたチョークの粉を払う。岩田様は俺が掃除をしてる間も黒板を消していくせいでスカートや俺の頭や制服に粉が落ちていく。
繊維に粉が入り込み、はたいても薄く白く汚れていく。岩田様は手を止め足元にある俺に目を向ける
「綺麗になった?」
先ほどの命令口調とは打って変わって猫撫で声で聞いてくる。
もちろんあんな状況で綺麗にすることなどできず、俺は正直に「すみません。できませんでした」と弱々しく述べる。
岩田様は再び命令口調に戻り、
「本当に使えないクズだな。ほら、そこに土下座しろ」
俺は手をつき、額を床につけ土下座をする。
「ほら、クズ謝りなさい。『ご主人様、しっかり掃除ができず申し訳ございません』ってほら、言え」
俺は岩田様のセリフを復唱する。それを「やり直し」「聞こえない。最初から」とニタニタ笑いながら何度も言わせる。
俺は壊れたラジカセのように「ご主人様、しっかり掃除ができず申し訳ございません」と繰り返した。
岩田様は俺に謝罪を言わせながら黒板消しを後頭部に押し付けクリーナーのように擦り合わせてきた。後頭部にはざらざらした感触が伝わる。
席の方から取り巻きの女子たちのクスクスという失笑が聞こえてくる。
「ちゃんと掃除しなかった罰。あなたが黒板消しになるのよ。
それと、今度から私が日直の時はあなたがやりなさい、これは命令だから。分かった?」
俺はひたすら謝罪を伝えていた。返事がなかったことに苛立ったのか、岩田様は俺の顔を無理やり起こして後ろ襟を掴まれる。
「分かったか?って聞いてるんだよ。このクズ」
「分かりました...」
俺が服従したことに満足したのか。手を離し、「早く洗ってこいクズが」と吐き捨てた。
俺は教室を出て、男子トイレへと向かう
すると、同じクラスで友人の白瀬も教室から出てきて俺に駆け寄る。
そして、一言
「お前めっちゃ勃起してんぞ」
「え!?いつから」
「岩田さんに呼び出されてたくらいからもう勃起してたぞ」
そんな最初から俺は興奮していたのか!確かに、これから自分よりも背の高いカースト上位女子にいじめられることに期待していなかったといえば嘘になる。
俺は正真正銘のマゾだ。無実の罪を被ったのも谷川さんや他の女子に蔑みの目で見られると思ったからだし、岩田さんにいじめられるのも内心興奮しながら受け続けている。
「それにしても、ご主人様にはバレてないだろうか。俺が楽しんでると勘づいたら仁科みたいに無視されるからな...」
仁科とは俺よりも前に岩田さんにいじめられていた大病院の御曹司だ。ただ、あまりにもいじめを喜びすぎたせいで今ではクラスの全女子に無視を決め込まれている。
「まぁ。殆どしゃがんでたから気づかれてないだろ。そういや、仁科は前『放置プレイhshs..』って言ってたけどな。救いようのない変態だよあいつは」
「仁科...あいつはキングオブMだよ。この学園であいつに敵う奴はいないな」
「お前もだよ。ったく、燧グループの御曹司が傘下の社長令嬢にいじめられて興奮するとか救いようがないな」
「...俺は御曹司なんかじゃないよ。ただの前妻の息子だ」
俺は燧グループという日本では知らないものはいない旧財閥家の息子として生まれたが、母は俺を産んで数年後に蒸発。元々親父の愛人だったマリアさんと親父が再婚し、妹のアリサが生まれる。
親父は3年前に「ロハスな生き方をする」と訳の分からない理由で突然財界から姿を消す。
今は継母であるマリアさんが燧グループの総帥として君臨している。
両親ともに燧グループから離れた俺は御曹司という看板は外れ、財閥家の末端ではよくある平民としての暮らしを享受しようとしたのだが、
「もう遠慮しちゃダーメ。伸琉ちゃんは私の息子なんだから!そんなどこの馬の骨とも知らない庶民の学校なんて行かせないんだからぁ。卒業してもママが面倒見てあげるからねぇ」
と、マリアさんは血の繋がっていない俺にも過保護なせいで本来ではありえない高待遇でこうして生活出来ている。
こんな俺に対して優しいマリアさんや燧グループの後継者となるアリサに迷惑をかけたくないのだ。
「ほんとにこんな兄でごめんな...アリサ」
「アリサちゃんが見たらお前嫌われるぞ。いや、お前は嫌われることで興奮するか」
「バカ!流石に身内に蔑みの目で見られたら生きていけねぇわ!」
俺にだってそれくらいの良識はある。
でも、あの経産婦とは思えない締まった躯体と親父を落としたおっとりした相貌を持ち合わせたマリアさんとその血を100受け継いだアリサに蔑みの目で見られるのも....
いやいや、それはもはや『終わってる性癖』の人間だろう!
こんなマゾ性癖拗らせてしまって本当にごめん....マリアさん、アリサ...
「お、噂をしてたら来たじゃん。」
白瀬が首をクイっと捻るとその向こうには設備点検をするアリサが通りかかってきた。
アリサは蘭生学園生徒会副会長をしている。人望があり、成績も優秀、運動神経も抜群で俺の妹としては出来過ぎている。
そして、顔もマリアさん似の垂れ目に潤んだ唇、ややカールのかかった金髪のセミロングと蘭生学園の男子の憧れとなっている。
「あら、白瀬さんそれに.....『伸琉さん』ごきげんよう」
「アリサちゃんこんにちは」
「ああ、アリサ。設備点検かい?」
「はい。午後の設備点検です。それで伸琉さんは何故そんなに真っ白なのですか?」
俺は我にかえる。
そうだ!岩田さんに黒板消しクリーナーにされていたことをすっかり失念していた。
アリサに「いやぁご主人様のお掃除に失敗して黒板消しクリーナーにされちゃってさぁ」などと言ったら「は?きも。2度と話しかけないでくださいこのマゾ野郎」と罵られるだろう。いや、アリサはそんな粗野な言葉は使わないか....
そんなくだらない事を考えてる間に俺は条件反射で嘘をついていた
「いやぁ扉開けたら上から黒板消し...みたいな典型的なトラップに引っかかっちゃってさぁ」
「ほんとあれは笑えたよ」と白瀬がアシストをしてくれる。
アリサは納得したのか口元に手を添えて「ふふふ」と笑いを抑えていた。
「もう伸琉さんってば。こんなに真っ白にして」
アリサは俺の頭に手を寄せて優しくチョークの粉を払ってくれる。
粉が舞い、セーラー服に粉がついていく
「アリサ、汚れるから自分で..
「動かないでください。自分の兄がこんな格好で出歩かれたら迷惑を被るのは私なんですから。だから伸琉さんは大人しくしててください」
アリサに冷たい声で言われ、子どもがジュースこぼして、お母さんに怒られながら服を拭いてもらう時くらい惨めになる。
直立不動になり、アリサが優しく撫でるように頭の粉を落とすのを見守る。
ちょうど鼻腔がアリサの頭上に来るため、サラサラした金髪からフレグランスの香りが漂う。
ある程度頭の粉が落ちて、アリサは手を下ろす。
そして、アリサは俺に耳打ちをして俺から離れる。
「生徒会室に着替えありますから。来てくださいね。それでは点検の続きがありますので。また放課後に」
アリサは3階へと向かっていった。
「ありがとな。白瀬、上手く合わせてくれて」
白瀬は「なぁ」と声をかける俺はどうしたと返す
「最後アリサちゃんになんか耳打ちされてたよな。何いってたんだ?」
俺は無言でゆっくりとトイレへと歩く
「おい、なんだよ言えないことかよ」
「気をつけてください、だとさ」
俺はまた嘘をついた。
気をつけてください、だとかみっともない格好しないでくださいというような妹なら俺はアリサに嫌われてるのだろうと割り切れるのだが....
『休み時間に"お兄様"にお会いできてアリサはとても嬉しいです』
なんて言われたら俺は情けない兄の姿を妹に見せる訳にはいかなかった。
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