私の人生の変貌
へこあゆ
第1話
また夏を告げる季節がやってきた。
この頃わたしは気持ちが沈みがちで、偏頭痛が激しかった。
世の中は気候変動の影響で、前年よりも強い雨が降り、そしてすぐに晴れる。
近年の寒暖差がわたしの体調不良を引き起こさせていた。
わたしは家に篭りがちで、あまり外に出るのが好きではない。
外に出ても、いいことなんてない。
ギラギラとした日差し、突然のスコールのような雨、高い湿度、全てが私を苦しめるのだ。
ある日のこと、わたしのポストの中に正体不明のチラシが入っていた。
「貴女の人生の手助けをします。080-〇〇〇〇-〇〇〇〇」
遠い地方のチラシの裏に、手書きでそう書かれていた。
わたしはここ数年の気怠さを断ち切るため、その番号に電話をかけた。
「貴女の人生を変えにきました。貴女は別人になりたいと思ったことはありませんか?」
電話口の機械音が私に聞いてきた。
わたしには家族もいない。友人もいない。身体も心も強くない。
今の人生はわたしにとってストレスだった。
「わたしは別人になりたいです。貴方の力でなれるのですか?」
私はその音声に聞いた。
「なれますよ。貴女の希望の人生をリクエストしてください。」
わたしは考えた。
今のわたしとは正反対の人生を送りたい。全てカスタマイズし、新しい人生のスタートを切りたい。
「ではお願いします。」
わたしは今、世界で活躍する飛び込み選手となった。
体を軽やかに動かし体を捻る。5回半1回捻り半宙返り。
世界で誰も成し遂げたことのない技だ。この技を決めたことで、わたしはオリンピックで金メダルを取った。
心身の弱いわたしはもういない。誰もが称賛し、もうひとりぼっちではない。
わたしは人生に輝きを覚えた。
しかし、わたしは知っていた。わたしの体は別の誰かの体になっていることを。
わたしのあの体で他の人は何を願ったんだろう。わたしは少し不気味に思いながら、でも振り返ることなく、今の人生に命を捧げるのだった。
私の人生の変貌 へこあゆ @hekoF91
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